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[知的財産]除斥期間経過後の抗弁

 Q:弊社使用の商標Aに類似の商標をB社が商標登録していることを知りました。B社の商標登録出願時に商標Aは弊社の商品を示すとして周知だったため、B社の商標登録は無効だと思うのですが、登録を無効にする審判の除斥期間5年が既に経過しています。B社から商標権侵害で訴えられたら、権利行使阻止の抗弁ができるのでしょうか。

 A:商標権の侵害訴訟では、商標登録が無効審判により無効にされるべきものと認められるときは商標権者は権利を行使することができません(無効理由の抗弁。商標法第39条準用の特許法第104条の3第1項)。しかし、ご相談のように、商標登録出願時(B社出願時)に、他人(貴社)の商品等を示すとして周知な商標又はこれに類似する商標であって、同一又は類似の商品等に使用するものであるとの無効理由(以下、周知理由)に基づき無効審判を請求する場合、登録日から5年(除斥期間)を経過すると無効審判を請求できなくなります(商標法第47条)。このため周知理由により本来無効にされるべき登録に基づく商標権が除斥期間経過後に権利行使できるかが問題になります。

 これについて最高裁平成27年(受) 第1876号同29年2月28日判決では、周知理由に基づく無効審判が請求されないまま商標権の設定登録の日から5 年を経過した後においては、原則的には、商標登録が不正競争の目的で受けたものである場合を除いて、周知理由によって抗弁を主張することが許されないが、訴訟の相手方の商品等を表示するとして周知理由に該当する場合には、商標登録が不正競争の目的で受けたか否かに係わらず、自己に対する商標権の行使が権利の濫用に当たることを抗弁として主張できることを示しました。即ち、周知理由に該当するために引用する商標が、訴訟当事者の商標であれば除斥期間経過後は権利濫用の抗弁が可能であり、第三者のものであれば除斥期間経過後は抗弁できないことになります。

 ご相談例では、B社の出願時に商標Aは貴社の商品を示すとしてB社の登録は周知理由に該当するのですから、B社からの侵害訴訟において貴社は、商標権行使が権利濫用であると抗弁できるものと考えられます。加えて、貴社は、先使用権(同法第32条)による抗弁も可能なものと思われますので、ご検討ください。

本誌:2017年7.10号 29ページ

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