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連載記事

問題解決力を目的とする「目的論」

 勇気づけの心理学「アドラー心理学」をベースに研修や勉強会を開催しております。前回の連載では、アドラー心理学を人材育成に生かすシーンについてお話ししました。わたしたちは、理解できない不適切な部下の行動に、つい、なんで?どうして?と原因論で接してしまいがちです。しかし、人の行動そのものを原因論で突き詰めても、なかなか望む結果は得にくい、というところまでお伝えしましたね。

 あなたは問題を「解決」したいのですか?問題を「解説」したいのですか?解決したいのであれば、リーダーはぜひ、目的論で接してほしいのです。目的論は1980年代にアメリカで生まれた、問題解決力向上を目的とした、ソリューションフォーカス・アプローチにも深く通じています。

 あなたの業務やプロジェクトの進行上、何かうまくいかない事態が発生したとします。機械の不具合などではなく、それが人や組織の問題であるならば「なぜうまくいかないんだろう」「どうして駄目なんだろう」「なぜ同じような問題が繰り返されるんだろう」と過去にさかのぼり原因追及をしていくと、詰まるところ「やる気が無い」とか「能力が低い」と、犯人探しになってしまい、他責の念が生まれます。これは原因論に根ざし、職場のムードは悪くなってしまいます。

 しかし、「どうなっていれば目的は達成できるだろう」「どういう状態が理想的なんだろう」と改めて問い直すこと、そして、「うまくいかない、駄目だ」となっても、100%駄目であることはまれで、「今までうまくいっていたことは何だろう」「この部分に限定しては前よりうまくいっているようだ」とできていたところ、伸びているところに光を当てていくと、道筋が見えてきます。

 「どうして」「なんで」という問いかけは原因論に結びつくのですが、ほんの少し、「どのようにすれば」「どうありたいのか」「なんのためにするのか」と視点を未来へ目的に向かって変化させ、人が前を見て働くことができる建設的なやり取りをリーダーは身につけてほしいのです。

 さらに、不適切な行動を繰り返す困った部下に頭を悩ませているのなら、ぜひその部下は、この3つの状態のどれに当てはまるのかを、一度考えてみてほしいのです。目に見える行動は「不適切」ですが、不適切な行動には3つの段階があります。

適切な行動を知っている⇒だが、やらない。
適切な行動を知っている⇒でも、できない。
適切な行動を知らない⇒だから、できない。

いかがですか?表に見えているのは、おなじ「不適切な行動」です。しかし、どの段階にあるのかによってリーダーとしてやるべき仕事が違ってくることはお分かりでしょうか。適切な行動を知っている⇒だが、やらない。という人は実際にはほとんどいないはずです。もしいたとすれば、仕事とは、業務とは、ということを冷静に伝える必要があるかもしれません。また、著しく勇気を奪われ自己保全のためにあえてこの段階を選んでいることもあるかもしれません。そんな人には勇気づけるかかわりが必要です。(勇気づけはアドラー心理学において大切な観念ですが、詳しくは改めてお伝えします)

 多くは、適切な行動を、「知っているけどできない」人か、「知らないからできない」人で、どちらに属しているかによりリーダーのなすべきことが違ってくることはお分かりでしょう。知っているけどできない人には、まるで初めて自転車に乗る子どもを応援するように、時に後ろをもって声を掛けながら一緒にやってやり、時に思い切ってこける痛さを体験させたりして、ティーチングやコーチングを使い分けながら伝える必要があります。

 知らないからできない人には、そもそも、適切で望ましい姿を伝える労力をさぼっていたということですから、原点からお伝えしなくてはいけませんね。いずれにしても、急に理想の姿にはなりませんから、スモールステップを準備して、伸びているところに注目して勇気づけを忘れずに送りたいものです。

本誌:2017年7.10号 23ページ

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