WEB VISION OKAYAMA

連載記事

思いの伝わらない部下への対処法

 勇気づけの心理学「アドラー心理学」をベースにした研修や勉強会を開催しており、心理カウンセラーでもある私ですが、新年度から新たな取り組みがスタート致しました。とある企業様のご依頼で、リーダーのための研修とリーダーの皆様、個々のご相談に乗るカウンセリングを定期的に行わせていただいております。

 単に研修だけでは得られない手応えを私自身も感じています。多くのリーダーのお悩みは、思いが伝わらない部下について…。なんで、みんなできる当たり前のルーティンをやらないのか。やるべきことを伝えた、それに対して分かりましたといったのに、なぜやらないのか。空気を読めない言動をするけど、考えたら分かるだろうって言いたい。など…。

 モチベーションはあるけどうまくいかないメンバーには、手段を伝えることができる。モチベーションが下がっているメンバーに対しても、スイッチの入れ方を探る手段は浮かぶ。しかし、なんで?どうして?といった言葉しか浮かばない「どうにも困った」部下がいるというのです。もしかしたら読者の方の中にも、「そうそう」と特定の誰かの顔が浮かんでいる方もいらっしゃるかもしれませんね。

 アドラー心理学は目的論の心理学とも言われます。人材育成には非常に「効く」心理学なのです。まず、部下に限らず誰かと接している時に、こんな言葉が頭に浮かぶことは無いでしょうか?「ありえない」「普通はこうするでしょ」「常識で考えたら」…。こんな言葉が浮かんでいる時は黄色信号です。人は誰でもその人特有のレンズ越しに世界を見ています(このことをアドラー心理学では認知論といいます)。同じものを見ている、と考えることそのものが人間関係を難しくするのです。「違う!」と感じる人が現れたときは、「良い悪い」の評価からいったん離れて、この人にはどんなフィルターがかかっているんだろう、とその人のレンズに関心を示すことから始めることをお薦めします。

 特に近頃は「ありえない」と簡単に口にする方が多いようで気になっています。「ありえない」は100%ないこと。本当に今「ありえない」と言える状況なのか、少し立ち止まったり振り返ったりして考えてみてほしいのです。ましてやリーダーとメンバーであれば、見ている視点が違うのですから。

 階段の1段目から見える景色と、5段目から見える景色は違うのです。5段目からは当たり前に見えるので「理解に苦しむ」と思えるかもしれませんが、1段目にいる人からは見えない景色だったりするのです。黄色信号の言葉が浮かんでいる時は「そうか、この人からはまだ見えないのか」と受け止めてみていただくと、伝えるべき言葉が違ってくるかもしれません。

 「なんで?」「どうして?」もついつい浮かんでしまう言葉です。しかし、この言葉そのものが「過去思考」「原因論」に繋がります。もちろん、ヒューマンエラーが重大な危機に繋がる仕事があり、その場合は原因を突き止めてエラーを防ぐ手だてをすることは必要不可欠です。しかし、人の行動そのものに対して、原因論を用いることはあまりお薦めできません。原因を突き止めて理由が分かれば、その人の行動が変わるのでしょうか?そもそも「なんで?」「どうして?」と言われたとき人は自己保身の気持ちになり、その発言に70%嘘が混じるとも言われているそうです。そんな時こそ、目的論で考えたいものです。どうなりたいか、どうありたいかそこに焦点を当てることが目的論で、そのお手伝いをすることがリーダーの役割かもしれません。次回はこの点をさらに掘り下げてお伝えしようと思います。

本誌:2017年6.12号 19ページ

PAGETOP