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相手に伝わる話し方

 話して伝えるスキルを磨くことは理解者を増やし、応援団を増やし、ファンを増やします。先日テレビを見ていて、思わず画面に向かって、つぶやいてしまいました。「それじゃあ伝わらないんだよー」。

 ちょっと引っかかることを、調べてみようというその番組。いくつかあるテーマの中に「5万円の最高級ご祝儀袋を買った人は、一体いくら包んだのか」というものがありました。そう。ご祝儀袋そのものが5万円なのです。 その名も鳳凰(ほうおう)。「京水引」という水引の中でも最高級の水引が使われている最高級品なのだそうですが、その中でも群を抜いて高額なこの「鳳凰」というご祝儀袋。

 取材を受けているお店の方は、なぜこの鳳凰がこんなにも高級なのか、このように説明していました。「素材も一番いいものを使って、色もよそに無いようなものを使って、技術的にも他ではないような編み方を考えて」。思わずテレビ画面に「も、も、もったいない~~」と突っ込みを入れてしまいました。普通のご祝儀袋が150個以上は買えてしまうのですから、どこもかしこも全てがすごいのでしょう。しかし、「一番いい」「よそに無い」「よそとは違う」では、「へー」とか「ふーん」という反応になりがち。一番いいといえる根拠はなに?よそとは違うというのならどこがどう違うの?何か一つでもいいので、具体的に・目に見えるように・体感できるように伝えてほしいのです。

 「京水引」は、普通の水引に比べて、とても細い細い糸を手作業で巻いて作るのだそうです。事実とは異なるかもしれませんが、一例を挙げるとすると、「市販の水引が毛糸の太さだとしたら、髪の毛の細さくらいの」とか「針の穴に5本まとめて通るくらいの細さ」などと言われたら、すごく細い!が伝わるのです。

 また、「この羽根の部分だけで40色の、異なる色のグラデーションになっているんです」などと伝えたら、「なんて繊細な色使い!」が伝わるのです。 「20年以上の経験を持つ職人しか作れず、1人の職人が手作業で1カ月かけて作り上げる」「通常の水引を作る過程は10工程くらいなのに対して、この鳳凰では120もの工程がある」などといわれれば、値段にも納得していただけることでしょう。

 あそこも、ここも、全てにこだわり尽くしていても、思い切って絞り込んで「それはすごい!」が伝わるように、具体的で・目に見えるように・体感できるように、掘り下げて伝えてみてほしいのです。何かひとつ「それはすごい」が伝われば、ここにこんなにこだわっているんだから、全てがすごいに違いないと思われるものです。あなたの製品の、あなたのサービスの「よそとは違う」どんなふうに表現できそうですか?その中でお客さまの「フック」に引っかかる一番のよそとは違うポイントは何でしょうか?

 さらに、「よそとは違うすごさ」が伝わったからといって、お客さまに必要とされるとは限りません。「へー、それはすごいね」「なるほど、それは高いのも納得だね」と思っていただけることと、「欲しい」「必要だ」と思っていただくのは全く別の次元だからです。そこには、やはり「ベネフィット」が必要です。ベネフィットは「製品やサービスを利用することで、消費者が得られる有形、無形の価値」と言えます。

 ちなみにこの5万円のご祝儀袋。実際に買い求めた方は、お嬢さんの結婚のお祝いに100万円を包んで渡したそうです。そしてその娘さんは、この高級水引が美しく、捨てたりしまいこんだりする気になれず、リビングのサイドボードの中に飾ってありました。それを見るたび、お母様からいただいた、この結婚への応援の気持ちや、無償の愛を思い出すことができるとおっしゃっていました。ちょっとした夫婦喧嘩の時など、その水引が目に入ると、そうだちゃんと向き合って頑張らなければ、と思い直すことができるのだとか。それがこの水引における「ベネフィット」なのかもしれません。

 結婚のお祝いにお子様へまとまったお金を渡す、ということは親なら誰しもあり得る話しです。もしかしたら、5万円の水引なんて!と思っていた方も「自分の娘に、息子に…」と思って下さったかもしれないですね。

本誌:2017年2.13号 17ページ

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