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[知的財産]特許請求範囲の難解な記載

 Q:特許請求範囲や実用新案登録請求範囲の請求項は、難解なものがありますが、分かりやすく書けないのでしょうか。

 A:もう20年以上前ですが、私も、企業技術者から特許事務所員に転職した際、特許請求範囲の難解さに驚きました。特許請求範囲や実用新案登録請求範囲は、1以上の請求項として記載され、請求項毎に独立した権利が認められます(各請求項は権利書として機能)。原則的には、請求項に記載された文言の全てを満たす物や方法(以下、物等)にはその請求項に係る権利が及びますが、記載された文言の一部でも満たさない物等には権利が及びません。

 このため、出願において請求項は、権利を取得しようとする発明や考案(以下、発明等)を示すための必要事項を漏らさず記載する必要がありますが、発明等の本質に必要ない事項を記載してはなりません。もし、本質的に不要な事項を記載してしまうと、その不要な事項を有さない物等には権利が及びませんので、本質的には同じ物等を他人が販売や使用することを禁止できなくなってしまいます。

 仮に、従来の鉛筆は断面が円形のものしかなく、傾斜面に置くと転がり落ちて不便だったため、断面を6角形にして転がりにくくした鉛筆を発明したとします。この発明の請求項は、分かりやすく「断面が6角形」としたいところですが、そうすると4角形や8角形の断面の鉛筆を他人が製造販売することを抑えられません。それらをカバーするため「断面が多角形」としても、楕円形や弓形の断面の鉛筆について他人の行為を抑えられません。転がり難くなる本質的理由を考えると、転がった際に重心が上下するためなので、請求項は「平面を転がると、その平面からの重心の高さが変化する」とすべきです。つまり、断面が6角形であることが本質的に必要ではなく、転がった際の重心高さ変化が本質的に必要なことなのです。また、目前の鉛筆がそうだからと、つい「消しゴム付き」、「名前記載欄がある」、「緑色の塗装」等を請求項に書いてしまうと、原則的には権利範囲が極めて狭くなって、他人の模倣を許してしまう骨抜きの権利になってしまいます。

 このように、広い権利範囲の有効な権利を取得するには、発明等の本質を表す抽象化した記載が必要になることがあり、分かりにくい表現になることもあるのです。

本誌:2017年2.13号 21ページ

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