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怠惰で放縦な日々

 季節は晩秋から冬に変わろうとしています。四季折々どの瞬間も捨てがたい魅力にあふれた日本ですが、私はとりわけ黄金に染まる晩秋の田舎生活が大好きです。

 サツマイモに続いて秋植えのジャガイモ、サトイモ、ショウガ、大根、水菜、ネギ、ワケギ、甘柿、渋柿など次々と収穫の時期を迎えています。こうしたベーシックな野菜や果物が庭先にあれば、あとは米、肉、魚、乳製品、調味料などを買ってくるだけで、ささやかな年金収入しかなくとも糊口を凌いでいけそうです。

 両親が亡くなって以来、郵便や宅配便が来る以外来客もなく、来る日も来る日も、12匹の猫とともに24時間をきままに過ごして退屈することがありません。人生も終盤に近づいてきた今、もはや何かを努力して身につけようなどという強迫観念に襲われることもありません。

 朝が来る。目が覚めるとまずスマホでニュースと昨夜のニューヨーク・ダウとシカゴ日経先物市場の成り行きをチェックし、9時に開く東京市場の動向を予想します。株は20代のころからずっとやってきていますが、トータルでは大損していると思います。たぶん死ぬまで失ったお金を取り戻すことはないでしょう。例え儲かっても使い道などないのになぜこんな危険なものを老後生活の中心に据えているかといえば、自分でもよく分かりません。おそらく中毒、依存症というのが一番近いのかもしれませんが、それでも“自分はリアルな世界と今この瞬間直接つながっている”という手応え感の魔力にはなかなか抵抗できません。

 市場が午後3時に終わると喫茶店に行き休憩。喫茶店のマドモアゼルや幼なじみのメロン栽培家コウグチ君夫妻と歓談。また家に帰って猫に餌をやったり掃除して、夕食。それから深夜までDVD鑑賞タイムです。DVDで見た作品もデジタルリマスター、ブルーレイ版が発売されるとまた買い直しては繰り返し見ます。

 最近見たのは「愛人 ラマン」。仏領インドシナ、サイゴンを舞台に15歳のフランス人少女と中国青年の秘められた愛の物語、それは原作者デュラスの自伝でもあるのですが、全体を覆う怠惰で放縦な雰囲気に激しく心を揺さぶられます。それに私世代のおじさんは[無修正版]という売り文句に少年時代のように心ときめくのです。一見の価値ありです。

本誌:2016年12.12号 27ページ

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