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ストーリーとブランド戦略

 楠木建氏の「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件」の中で、人に話すことのできるストーリーのあるブランドが競争優位を生み出すことが指摘されている。楠木氏は、「戦略の神髄は 思わず人に話したくなるような 面白いストーリーにある」と述べている。また、「『違いをつくって、つなげる』、一言でいうとこれが戦略の本質です」とも述べている。楠木氏は同時に論理の一貫性の重要性を主張している。論理の無い実践は一貫性に欠けるために競争優位も生み出さない。従って、永続するブランドは生み出されないことになる。戦略ストーリーを作るための骨法10カ条として次の10のポイントを挙げている。

1.エンディングから考える コンセプトからスタートし一貫したストーリーを貫く。

2.「普通の人々」の本性を直視する 普通の人が普通に納得するコンセプトを考える。つまり奇をてらわない。

3.悲観主義で論理を詰める 楽観主義ではなく悲観主義で論理を立てる。

4.物事が起こる順序にこだわる ストーリーの原型を固め、時間展開の中でストーリーを徐々に練り上げる。

5.過去から未来を構想する あるべき未来から今日の戦略を組み立てる。

6.失敗を避けようとしない 最後はやってみるしかない。ビジネスは本質的に実験である。

7.「賢者の盲点」を衝く 一般的に「良いこと」と信じられている常識の「逆を行く」ことが求められる。

8.競合他社に対してオープンに構える ストーリー全体は簡単にはまねできないという自信をもつ。

9.抽象化で本質をつかむ 具体的事象の背後にある論理を汲み取って、抽象化する。

10.思わず人に話したくなる話をする 本人が面白がるストーリーをつくる。それが戦略を伝えることになる。

 内田和成氏監修の「物語戦略」でも、「経営資源としてシンボリック・ストーリーを使いこなせる企業と、使いこなせない企業では、競争力に大きな差が生まれてきます」と強調している。要はデイビッド・アーカーのいうブランドの持っている「連想」や「知覚品質」などが一貫したストーリーとして存在すると強いブランドとなるということを意味する。「物語戦略」の著者である岩井琢磨氏や牧口松二氏は広告代理店に勤務されている。実務経験を通して一貫した広告コミュニケーションがストーリーとして競争優位を生み出すことを強調している。彼らは、「戦略とは、必要に迫られて、難しい顔をしながら仕方なくつくらされるものではなく、誰かに話したくてたまらなくなるような、面白い「お話」をつくるということなのだ」と述べている。広告代理店の仕事は正にコミュニケーションという手段を通じてより強いブランドを作り上げることに他ならない。

 ここで岡山のコミュニケーション戦略を考えてみたい。うらじゃ振興会のホームページによれば「温羅」は朝鮮半島の百済から吉備の国に渡来し鉄(たたら)、塩、造船などの技術をもたらし豊かな吉備国の創設に貢献したと記述されている。この吉備国を滅ぼしたのが大和朝廷であり、「温羅」は鬼にされ大和朝廷から派遣された「桃太郎」が鬼を滅ぼす物語として「桃太郎」の伝説が語り伝えられている。同ホームページでは岡山の人々は「温羅」も「桃太郎」も共に大切にして来たと述べられている。

 客観的な史実があるわけではないが、ストーリーとして語り継ぎ岡山のコミュニケーション戦略を考える場合「温羅」の立場に立つのか、それとも「桃太郎」の立場に立つかによって大きな違いが生じてくる。岡山の広告戦略としては世間一般によく知られている「桃太郎」を前面に打ち出すべきなのか、それとも「温羅」で行くのか、あるいは、歴史から離れて「晴れの国」で行くのか、または、豊かな「果物王国」で行くのかなかなか難しい選択となる。

 現在の岡山という地名の元となる岡山城を築城したのは宇喜多直家、秀家である。その後短期間の小早川秀秋の時代を経て池田家に移された、池田家の治世は明治まで続くので、多くの岡山の人は池田家と岡山を結びつけて考えている。同じように考えれば桃太郎という国内でだれもが知っている人物を岡山のコミュニケーションに活用した方がスムーズな展開が可能だと考える。読者の皆様はどれが一番岡山に相応しいと思われますか。

本誌:2016年9.5号 19ページ

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