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クレーム対応にも生かせる心理学

 ビジネスマナーや接客接遇研修を担当することも多い私ですが、それらの研修にも必ず心理学を取り入れています。「型」をお伝えするより、「マインド」をお伝えしたい、と思っているから。そして、マナーも接客も相手がいるコミュニケーションだからです。

 電話対応でクレーム処理を研修させていただいた企業様に次回研修に伺ったとき、教えていただいた通りにしたのにかえってお怒りを買ってしまった!とお声を頂きました。その件を詳しく検証してみましょう。

 電話に限らずクレームへの対応は以下のような5つのステップを踏んでいくことが理想的です。

 【謝罪】この度は不愉快な思いをさせてしまい申し訳ございませんでした。

 【状況理解】どのようなことがあったのか、詳しくお聞かせくださいませんでしょうか?

 【対応策の提示】今回の件につきまして、◯◯か△△の対応をさせて頂ければと思います。ご検討いただけませんでしょうか?

 【感謝】この度は、ご指摘いただきありがとうございました。今後このようなことが無いよう注意して参ります。

 【情報共有】経過や結果を上司、関係者に報告する。同じクレームを繰り返さないよう対策を検討。

 このステップで最も大事なことが、最初の謝罪です。状況も理解できないうちに謝罪すると、こちらの非を認めることになるので謝罪の言葉は慎重に発すること、と書かれているマナーの本もありますが、まずは「心情理解」に繋がる謝罪の言葉から始めていただきたいのです。

 クレームをおっしゃっているお客さまは、どういう事情でお怒りなのかまだ分かりません。お客さまの勘違いかもしれませんし、当方の不手際ではないかもしれません。しかしながら、今現在お客さまが不愉快な思いをなさっているのは確かです。事情はどうであれ、今不愉快な思いをなさっている、ご面倒をおかけしている、お困りになっている、その心情を理解するのです。

 その心情理解が切り口となり、状況説明に繋がります。詳しく状況をお聞かせいただく中で、どこに問題やトラブルがあるのか、お客さまに提示するべき対応策は何が最適なのかを汲み取っていきます。途中で、原因が分かったとしても口を挟んではいけません、ただお聴きする姿勢で状況説明を受けた後、「2点ほどご確認いただきたいのですがよろしいでしょうか」とお客さまの非を避難することなく確認に入ります。

 冒頭のかえってお怒りを買ってしまった、という対応について詳しくお聴きしてみると、「心情理解」に認識のずれがあったことに気が付きました。お客さまに契約して頂いている製品が、メーカーの急で一方的な仕様変更で、急いでいる仕事に取りかかれず、サービスセンターに電話しても繋がらず、オフィスに電話してこられた、とのことでした。

 心情理解が大切よね!とお怒りのお客さまに向かって「さようでございますか~」と情感たっぷりに伝えたところ「さようでございますかじゃ無いわよ」とかえってお怒りになってしまったとのことだったのです。「さようでございますか~」は心情理解に努めているようで、少し残念な対応だったかもしれません。

 怒りという感情は突然ふってわいてくる感情ではありません。怒りは第二次感情と言われます。寂しい、辛い、疲れた、といった第一次感情が、ある刺激で溢れた時、怒りという感情として、表面化するのです。心情理解はこの第一次感情にスポットを当てなければ「分かってくれた」には繋がりません。多くのクレームの第一次感情は「困っている」に分類されるのではないでしょうか。お客さまは「お怒り」の前に「困って」いるのです。「それはお困りでございますね。詳しく事情をお聞かせくださいますでしょうか」とお客さまの話すペースに合わせたスピードで話し始めるとスムーズだったかもしれません。ぜひ、心情理解は第一次感情と心掛けてみてくださいね。

本誌:2016年6.13号 19ページ

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