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コミッティー・コルベール

 日本ではアメリカ大統領選挙の報道に偏りあまり大きく取り扱われていないが、欧州連合(EU)からイギリスが離脱するのではないかという問題が起きている。①独自通貨のポンドの維持、②移民への社会保障費の制限、③各国議会にEU法案の拒否権の付与などイギリスの主張を大幅にのむ形でEUの合意がなされた。イギリスは本年6月にもEUにとどまるかどうか国民投票にかけることになった。

 EUはヨーロッパを戦場として多くの血が流れた二つの世界大戦の反省から、当時の基幹産業である石炭と鉄鋼を共同管理するための欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)がライバル国同士のフランスとドイツが手を結ぶ形で1952年に創設された。現在欧州連合(EU)として28カ国、5億人の市場として発展してきたが、内部ではギリシャ問題、シリアからの難民問題など多くの問題が露呈している。

 このECSCの創設とほぼ同じころ戦後の荒廃から立ち上がり経済的繁栄を目指すために1954年フランスでジャン=ジャック・ゲランの主導の下にコミッティー・コルベールが結成された。コミッティ・コルベールのホームページ(http://www.comitecolbert.jp/missions.html)によれば、設立当初の参加メンバーは15ブランドであったが、今日では80ブランドに拡大している。

 ジャン=ジャック・ゲランは「みつこ」「夜間飛行」などの著名な香水メーカーの三代目社長である。コルベールの名称は17世紀ルイ14世の財務・大蔵大臣であったジャン=バティスト・コルベールに由来する。彼は輸出を強化すべく、外国の技術を取り入れながら手工業の創設を奨励したり、海軍の拡張や港の整備に、また東インド会社や西インド会社の設立に貢献した。コルベールは文化人でもあり、ローマにアカデミー・フランセーズ、またパリにコメディー・フランセーズを設立している。

 コミッティー・コルベールの目的は下記のようにうたわれている。「多様なメンバーで構成されるコルベール委員会は、フランス的審美眼を具体化し、それぞれのメンバーの価値観を伝えるとともに、フランスラグジュアリーの目指す共通の戦略や各メンバーブランドの個別の戦略を練り、共に実行します」。そして、各メンバーは「フランスを代表し、 世界中にフランス流『美しい暮らし』を広めることを目的としています。 ラグジュアリーと文化を結ぶため、世界中でさまざまなイベントを開催します」と行動指針を規定している。この「美しい暮らし」は“アール・ド・ヴィーブル”(art de vivre=生活美学)であり、メンバー全社が世界中にフランス流の美しい生き方を広めているのである。

 資生堂の元社長の弦間明氏はラグジュアリー・ブランドには次の8つの条件があると述べている。
1.歴史や物語があること
2.研究と技術の蓄積があること
3.高品質でふさわしい価格であること
4.人から人に手渡しされること
5.ブランドのポジショニングを高めるためにマーケティングに厳しい自己規制を行っていること
6.創業者、経営者の人間性が見えること
7.伝統を大切にしながら、絶えざる革新を行うバイタリティがあること
8.世界的であること

資生堂は日本発のラクジュアリー・ブランドの確立のためにコミッティー・コルベールのブランド管理を研究し、その中から上記の条件を自社の世界展開の中核的戦略として置いた。次回8つの条件の詳細について考えてみたい。

本誌:2016年3.7号 30ページ

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