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若い訪問看護師さん

 母(96)を在宅で介護する生活がもう15年にもなります。53歳だった私もいつのまにか67歳になりました。要介護度5、寝たきりでほぼ植物状態の母の介護に当たっては、家族(と言っても私ひとり)の力だけではできません、さまざまな介護保険制度、在宅医療サービスを受けています。

 とりわけ母の日々の健康状態をチェックし、身体介護の中心的役割を果たしてくれているのが訪問看護師の存在です。この15年間ずっと同じ訪問介護ステーションを利用しているので、皆さま母の病歴や健康状態、個性等よく把握されていて適切なケアをしていただいています。

 ところが1年ほど前から来るようになった看護師さんが担当したときに限って小さな“事故”がときおり起きます。爪を切るとき指を切って出血した、ベッドや床のカーペットが水浸し、顔に小さなあざができていた、などなどです。

 どれもこれも大したことではないし、息子の私だって母の変形した爪を切っていて間違って指先を切ってしまったこともあります。つまりケアしていればいかにもありがちなささいな失敗、事故に過ぎないのですが、他の看護師や訪問ヘルパーさんがそんなヘマをしたことは皆無なだけにやはり気になります。

 気にはなるけれど家族としては何も言えない……、一生懸命母のケアをしている看護師さんの小さなミスを責めるのは大人げない、彼女だって人の子、そんなことを指摘されたら気分を害するでしょう。

 私は毎度こう思ってきました。「たまたま爪ではなく指を切ってしまった、たまたまベッドの上でバケツがひっくり返ったのだ、それにこんなことはそう滅多にあることではない……」と。

 ところがつい最近、この看護師さんが来てくれた日、外出先から帰って母の顔を見てびっくり。鼻筋が3cmぐらい赤く腫れていました。体を横にしたとき顔面をベッドの防護柵に当てたのではないかと推測します。ついに私は決心をして所長さんに彼女を母の担当から外すようお願いしました。

 私自身がその人の技量が信頼できないと思っている人に母のケアをゆだね続けることは、母の介護を総合プロジュースしている私の責任放棄であると思われての決断でした。

本誌:2016年3.7号 13ページ

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