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足立美術館

 ときおりたまらなく山陰の冬の曇り空を見たくなることがあります。3月初め、暖かい日が続きノーマルタイヤでもドライブできそうな日を見計らって足立美術館(島根県安来市)に行きました。

 ちょうど京都画壇の両雄「竹内栖鳳と橋本関雪」展が始まったばかりでしたが早春の平日が幸いしてお客が少なく画廊も白砂青松の庭園も心ゆくまでゆっくり鑑賞できました。

 いっぷう変わったこの美術館の運営方針というかお客に対する姿勢、サービス精神に創立者、足立全康(1899-1990)さんの気取らない人柄のよさを感じます。何としてもわざわざ見に来てくれた人に名画と庭園を心ゆくまで堪能してもらいたいという気持ちが伝わってきます。

 まず第一に、展示替えの時期を除いて年中開館しています。多くの美術館が毎週1日休館日を設けているのと大違い。職員の接客態度にも“おもてなし”の気持ちがこもっていて好感がモテます。他の有名な国公私立の美術館の職員のように官僚臭く冷たい印象がありません。

 さて自動改札機に入場券をかざして入館すると随所に全康さんの息吹を感じます。「この角度から庭園と借景の滝を見てください」と立ち位置まで示してくれます。おせっかいと分かっていてもどうしてもそこの場所から絶景を見て欲しいのですね(笑)。

 びっくりするのは「生の額縁」とか「生の掛け軸」です。額縁や掛け軸の中にあるのは庭園そのもののガラス越し風景です。あえて“俗悪”な趣味丸出しを演出するところが全康さんのすごいところですが、私はこれはちょっとイタダケナイと思います。

 というのも額縁の中の生の風景は当たり前ですが具象そのものだからです。人間の美意識によって再構成されていない生の風景は芸術とは言い難い、そんな気がします。

 館内には軽食が食べられるレストランと喫茶室があります。これがまた驚きで、飲み物は何でも1000円(喫茶室)、カレーは1200円と思い切った値段が付いています。愛嬌ですね。でも高いけど許せる気にさせるところがまたいいのです!

 6月1日からは私が大好きな菱田春草の「梅猫」が展示されます。熊本県立美術館にある「黒き猫」とともに猫好きにはたまらない名画です。

本誌:2015年4.6号 16ページ

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