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コンセプトボード

 前回左脳と右脳をフル回転させていろいろなアイデアを考え、ターゲットとする消費者調査によりそのアイデアを確認をする重要性について述べた。マーケティングの基本はこれに尽きる。しかし、コンセプトをどのようにチェックするか、自社独自のスタンダードなシステムを編み出し経験値を積み重ねている企業はどれくらいあるだろうか。大手の消費財の企業であればこれは当然のこととしてなされていなければならないが、ひょっとすると調査の度に広告代理店や調査会社に丸投げしているかもしれない。広告代理店は独自のシステムを持っていても、自社にはそのようなノウハウの蓄積がない場合も考えられる。宝の山の消費者調査こそ自社でやるべきであり、丸投げで広告代理店に美味しいところを与えてしまっては元も子もない。

 企業がグローバルに展開している今日、標準化を進め世界中のノウハウを企業の共有財産として活用できるようにしておくことが重要である。ユニリバーのティモテは1970年スウェーデンで開発され世界展開され、日本でも大ヒット商品となった。これも消費者調査結果という「知の集合体」を世界中で共有化していることの成果と言える。

 優れたコンセプトボードとはどんなものだろうか。新しいコンセプトを簡潔に一枚の白紙にどう表現するかが鍵となる。仮にコンセプトが3案あったと仮定しよう。この3案をどう評価したらよいだろうか。思い入れのある新しいアイデアだとあれもこれも入れたいと思うかもしれないが、消費者は複雑なコンセプトは理解できないかもしれないし、そもそもあれもこれもだと訴求点が不明確になる。コンセプトは端的にまとめる必要がある。

 例えば、花王の「ヘルシア」は「脂肪の燃焼効果がある特保のお茶飲料」がコンセプトである。消費者の公正な意見が聞けるようにバイアスを極力防ぐ必要がある。コンセプトボード一つにしても実はノウハウの塊である。比較する既存品も新製品のアイデアもできればほぼ同じ形を踏襲すればノウハウの蓄積となりより有効な調査に結びつく。

 サイズは例えばA3に統一しておこう。その左側四分の一程度に写真を入れることとしたい。仮に写真がない場合はイラストでもよい。ただ、大切なことはベンチマークとする競合品も同じデザイナーにイラストで表現してもらう必要がある。左側の下には商品名、企業名、容量や価格などを入れたい。右半分には商品の特徴を記載したい。これも文字数を均一にしておきたい。同じ作業を競合品にもして、自社の3案と例えばベンチマークとする競合品も3品選んでおくことにする。ここまですれば実際の調査に入れる準備が完了する。

 次は対象のサンプルの抽出である。対象者は、例えば、20代から30代の都会に住む女性で所得が平均より高い母集団としよう。競合品を使用しているか、あるいは、このカテゴリーの消費者である人に絞る必要がある。定量調査で取り敢えず300名程度のサンプルを確保することとする。これは調査会社に依頼すればよい。

 全部で6枚のボードがある。順番はランダムにして見せられる順番でバイアスがかからないようにしたい。どのような評価を取るのか、どのような調査表にするのかも大切なノウハウである。調査会社と一緒に慎重に調査表を作成する必要がある。最終的には購入したいかどうか(バイングインテンション)やどれくらいの価格であれば購入するのかというところを把握したい。同時にこの商品のどこに反応しているのか、際立っているところは何なのかも知りたい。消費者の調査は丹念に読みこなせばいろいろな情報の宝庫と言える。

 筆者はこの定量調査に加えて必ず定性調査を入れるべきと考えている。定量調査では完全に理解できなかったことを定性調査でしっかり聞き取ることができるからである。同時にこの定性調査もできれば調査会社に任せないで自社で取り組むべきである。確かに思い入れのある商品について聞くのでどうしてもバイアスがかかるかもしれないが、しかし、直接消費者の意見を聞くことは重要である。筆者は学生のビジネスプランコンテストを指導することも多いが、定量調査はネットを活用して実施する場合が多い。しかし、仮に定量調査ができない場合は、少なくとも定性調査を実施するように指導している。消費者の意見の裏付けのないアイデアは「思いつき」にすぎない。定量調査と定性調査については次号に譲る。

本誌:2014年12.1号 31ページ

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