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いとこの来訪(1)高野山へ

 いとこ(従兄弟、従姉妹)というのは不思議な存在です。兄弟とはしばしば骨肉の争いをする我々ですが、日常生活において適度な距離を保って接することができるいとこは兄弟とも友人とも違う何か懐かしいような感覚を長い人生を通して共有していける存在ですね。

 私の両親はともに兄弟のなかでは末っ子に近かったので、私にはもう1人もおじ、おばが残っていません。その代わり父は5人兄弟、母は11人兄弟でしたので大勢のいとこが残されました。

 なかでも19歳でカナダに渡った伯父には6人の子どもがいて、いとこたちとは日本とカナダの間で離れて住んでいるものの長い交流の歴史があります。7月中旬、父の四十九日の法要にはるばるカナダから2人が参加してくれました。

 ヨリコとブルースの姉弟でヨリコは78歳、末っ子のブルースは私より2歳年下の64歳です。来日初日は大阪だったので、翌日岡山へ来る前に、いとこたちを和歌山県・高野山に案内しました。大阪・難波から南海特急で2時間ほどの高野山ですが、思い立たないとなかなか行けるところではなく、私にとっても十数年ぶりの高野山でした。

 南海電車が郊外の田園地帯に入っていったころヨリコが私に尋ねました。「あの緑の芝生のような背丈のそろった草は何なのか」と。見れば切手ぐらいの大きさの田んぼに青々と茂っている稲でした。

 カナダの人たちにとって農地とは地平線のかなたまで続く麦畑であったり砂糖大根畑であったりジャガイモ畑なので、猫のひたいのような田んぼで米を作っていったい農家はどうやって生計をたてているのか理解不能という感じでした。

 大都市近郊の農家の収入の仕組みを英語で分かりやすく説明することは困難でしたが、岡山の我が家の近所の農家のガレージにはトラクターやトラック、軽自動車のほかにベンツや国産高級車が2台ぐらい並んでいるのは珍しくありません。収入面においてカナダの大規模農家と何ら遜色のないのが日本農業の恐ろしさといったら言い過ぎでしょうか。

 そうこうしているうちに電車は終点の極楽橋駅に到着。ケーブルカーに乗り換えていよいよ世界遺産であり、世界の密教センターとしてにぎわう高野山参りが始まりました。

本誌:2014年夏季特別号 17ページ

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