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エジプト気球墜落

 1月にアルジェリアで起きたテロ事件の記憶がまだ生々しいというのに、またも人気観光地ルクソールで4人の日本人が犠牲になりました。こういう事件や事故が報道されると誰しも最初に犠牲者の名前と年齢を確かめるのではないでしょうか。

 今回の日本人の犠牲者は60代半ばの2組のご夫婦でした。この年代の人々はほかの世代に比べ一番気力、体力が充実し、また財力もあります。元気なシニア世代は通り一遍のハワイやヨーロッパの大都市では感動も薄い。一生に一度は子供のころ夢見た遠い遠い異国の地に出掛けたいのです。エジプトやトルコの古代遺跡、アステカやインカ文明の遺跡、イグアスの滝やパタゴニアの大草原。できればギアナ高地にだって行ってみたい。

 ところがこうした世界の秘境で彼らはとんでもない事故に遭遇します。セスナ(小型遊覧飛行機)のエンジンが止まったり、観光バスが対向車線のトラックと正面衝突したり、何故かこういう事故がよくあるのです。

 でもさすがに今回のように気球が墜落したというのは聞いたことがありません。テロや交通事故は十分想定できても、まさかの気球炎上と墜落です。

 「こんな死に方はいやだな」私がそういうと、いつもよく行く喫茶店のマドモアゼルは「でも、夫婦いっしょだったからよかったじゃない」と女性らしい感想を語っていました。たしかにこれが夫婦でなくていわくあるカップルだったりしたら墜落以上の修羅場が待ち構えているだろうし、夫婦でもどちらかだけがとっさに飛び降りて助かったとしてもそれはそれで一生恐ろしいトラウマを抱えていかなければなりません。

 梯子など高いところから落ちて運良く助かった人がしばしば語ることですが、人は墜落する何秒かの間に生まれたときのことからいままで生きてきた一生のできごとを走馬燈のように思い出すとか。未来が絶たれると脳は逆回転するらしいのです。

 こういうときよみがえる記憶はいい思い出ばかりでしょう。幸せだった幼い日々、楽しかった少年少女時代、配偶者に出会った喜び、子供達は大きくなり今や独立し、安心して旅に出た……。(突然現実に戻って)それなのに今こうして墜落している……! 怖すぎます。墜落死だけは絶対避けなければなりません。

本誌:2013年3.11号 13ページ

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