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コーヒー

 学生時代以来、還暦をとうに過ぎた現在までわが人生で一貫しているのはコーヒーに対する度を過ぎた執着です。銘柄やいれ方にこだわる“通”なんかではなく、インスタントでもおばちゃん喫茶のモーニングでも何でもOK。でもフレンチローストのような濃いコーヒーかエスプレッソがあれば一層幸せです。

 1日に7、8杯飲むとしてこれまでの40年間で10万杯のコーヒーが貴重な時間とともに胃袋の中に流れていった勘定になります。適度な量の酒は体によいというのが通説ですが、コーヒーはいったい体にいいのか悪いのか、もし悪いのならすでに相当健康を害しているはずですが胃腸はいたって快調。心の健康にとっても必須です。

 そんな楽観論を裏付ける研究が最近アメリカの権威ある医学誌に掲載されました。(Wilson, Kathryn : Journal of the National Cancer Institute, May 17, 2011)

 論文の要旨は1日に1~3杯のコーヒーを飲む男性は前立腺がんになるリスクが全然飲まない人に比べて30%減るというもの。しかも6杯飲んだらリスクが60%も減るというおよそ学術論文としてはにわかには信じがたい内容です。しかしコーヒー中毒の私には願ってもない朗報であることに違いありません。

 今まで、過度のカフェイン摂取は本当は体によくないのではないかと密かに心配していたのですが、コーヒーには体に害をなす要素はとくにないばかりか、中高年男性にとって一番の気がかりである前立腺がんを予防するというのですから、ますます喫茶店通いに拍車がかかります。

 昔パリによく行っていたころ、かの地でもカフェは私にとって唯一快適な居場所でした。歩道にはみ出したテーブルでデミタスを飲みながら絵はがきを書くけだるい愉楽。とどのつまり、才能や名声、富に恵まれていようがいまいが人生の究極の幸せとはこういう瞬間にあるのではないかといつも実感します。

 今古里の岡山に住んでいてほとんど毎日、ときには午前と午後の2回出掛けるのが岡山市南区妹尾崎にある喫茶店ロッキーマックスです。マドモアゼルがいれてくれる1杯のエスプレッソ。すっかり忘れていた若き日の懐かしい記憶が次から次へと脳裏によみがえってきます。閑雅な午後のコーヒータイムです。

本誌:2011年6.13号 14ページ

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