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早春の庭

 この冬は各地で大雪が降り、屋根に積もった雪を降ろす作業だけでもすでにたくさんの人がケガをしたり亡くなっています。雪がほとんど降らない県南に住んでいることのありがたさに感謝するこのごろです。

 しかし、季節は確実に春に向かっていて大寒とはいえ太陽の光は早くもまぶしいぐらい強くなり、母から受け継いだ庭の荒れ果てた花壇にも早春の気配がただよい始めました。

 数年前に植えた土佐ハナミズキは緩やかにカーブした枝を四方八方に拡げ、枝には大きなつぼみがいっぱい膨らんでいます。まもなく黄色い蝶のような花を咲かせます。

 春の花はなぜか黄色のものが多いものです。ハナミズキの株もとでは福寿草の大きな花芽が地面から顔を出してきました。私がまだ学生だったころ正月用に買った寄せ植えを地面に降ろしたものが我が家の福寿草のルーツです。福寿草は早春に花をつけたあとセリのような葉を伸ばすのですが、その葉は5月には枯れてしまいます。

 葉っぱがあるのは1年のうちたったの2、3カ月、それでも毎年花を咲かせ、株を増やしていくだけのエネルギーを蓄えるのだから大したものです。またパラボラアンテナのような花は太陽光を花の中心の雌しべに集中させて温度を上げるのに役立つと同時に、黄色は昆虫を呼び寄せるのに効果があると何かの本で読んだことがあります。

 黄色の花木は他にもレンギョウ、ヤマブキ、エニシダ、ミモザと枚挙にいとまありませんが、今年はこれらにロウバイが加わりました。たった1輪ながら独特の蝋のような質感の丸いつぼみを付けています。

 このロウバイ、10年ぐらい前、花壇の隅に実生で生えてきたのですが、年々図体ばかりが大きくなるだけで全然花を付けませんでした。先日、「これはロウバイそっくりの偽物かなあ?」と父がお世話になっているヘルパーさんに話したら、ロウバイなら家にいっぱいあると言って花が咲いた株を持ってきてくれました。

 「本物のロウバイが来たからには偽ロウバイは要らない、切ってやる」と私が脅かしたらこの木は一夜にしてつぼみをひとつ付け自分は正真正銘ロウバイだと証明してみせたのです。植物も年季が入ると人の心理を読むようになるのにはびっくりですが脅しただけの甲斐がありました。

本誌:2011年2.7号 14ページ

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