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幽霊戸籍問題

 この夏、東京で発生した所在不明高齢者問題は偶発的、散発的な事例ではなくその後全国至るところで同様のケースがあることが分かりました。大家族制度の崩壊や年金詐取といった背景も指摘されていますが、一番の問題は縦割り行政の弊害で個人情報を一元的に把握することができない今の行政システムにあると思います。

 この問題を抜本的に解決するためには戸籍、社会保険、課税問題を語るときいつも話題になりながら批判が多くて実現できない国民総背番号制の導入しかないと思います。

 さて、幽霊高齢者の問題は今になって突然発生したわけではなく、これまでも戸籍を管理する現場では問題に気付きながらもいかんともしようがなかったのではないか、そんなふうに思います。

 今年の初めごろカナダの親戚から自分達のルーツを知りたいので明治14年生まれの祖先の戸籍を取ってくれないかという依頼を受けました。散々苦労したあげく鹿児島県にある本籍地をさぐり当て代理申請したところ、折り返し戸籍の写しが私あて郵送されてきました。

 それによると平成16年に、「高齢につき死亡と認定、某月某日除籍」と注が付されていました。ちょっと計算してみるとおおよそ125歳で除籍処分されたことになります。実際にはこの人は20代のころカナダに移民し、後年カナダ国籍を取得し、しかもその事実を日本政府に届けていなかったために、日本での消息が消えたあともおよそ100年間のあいだ戸籍の上で生き続けました。

 なぜ100年も?。いったん除籍したあとで行方不明の人が出現したときの責任論や手続きの煩雑さを考えると簡単には除籍できないと代々の担当者が考えたに違いありません。

 いっぽう、私の伯父も若いころカナダに移民し、カナダ国籍を取ったのですが、万事几帳面な性格だった伯父はカナダ国籍を取得したことを当時ウィニペグに置かれていた日本国領事館に届けました。領事館は本籍地の役場に報告書を送り、役場は除籍手続きをしたうえで、除籍の経緯を戸籍に記載して今に残してくれました。

 戦前においてさえ、日本の役所は届け出さえすればこんなにもきちんとした対応をしてきたことは高く評価されるべきです。

本誌:2010年9.13号 12ページ

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