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裁判傍聴記

 裁判員制度が始まって1年が過ぎましたが、私自身あるいは知人友人の中にもだれ一人裁判所から呼び出しがあったという話を聞きません。正直なところ、裁判とか裁判所に縁のない一生を送れたらいいなと思います。

 ところが最近生まれて初めて裁判の傍聴をしました。中学校時代の恩師があろうことか刑事被告人として法廷に立たされたのです。教科支援員として派遣されていた小学校で児童を転ばせ全治10日間のケガをさせたという容疑です。書類送検された結果、いくばくかの罰金を払うよう略式命令が出たのを不服として本訴したのです。

 児童の親にしてみれば子供が学校でとんでもない目に遭わされたという怒りを抑えられず警察に被害届を出したのでしょう。教育現場においてさまざまな不祥事が頻発する昨今、両親が「訴えてやる!」といきまくのを止める権利はだれにもありません。

 ところが事件が略式命令で済まず公開の法廷で本格的な論戦になってしまった今、被害者サイドは事態が予想もしない方向に泥沼化していることに当惑しているのではないかと思います。

 裁判所は証人としてこの春中学生になった被害者本人および両親、当時の担任や校長を次回以降法廷に喚問することを決めました。中学生を大人の裁判所に呼び出し証言させるとはこれまた残酷な話です。(生徒の喚問について被告弁護人は教育的配慮から不要と主張したが…)

 そして裁判の結果、罰金刑が確定してもそれは国庫に入るだけで被害者が慰謝料を請求するためにはまた一から民事で争わなければなりません。まさに典型的な勝者なき戦いです。

 私が中学生のとき廊下を走っていたら背後から両耳がちぎれるぐらいのバカ力で引っ張るやつがいる。振り向いたら先生でした。先生、50年前とは親も子も違いますよ。今は冗談も愛の鞭もそんなもの通用しないんですよ。

 とにかくこの裁判、新聞で報道されたような事件だったのかどうか、そして生身の人間が裁かれる法廷とはいったいいかなる場所なのか最後まで付き合ってみようと思います。

本誌:2010年5.24号 16ページ

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