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ミーシャ 、母親に

 夜遊びしないミーシャが家を抜け出して外泊したのが3月の末。それから2カ月あまり過ぎた5月28日の朝、 大きなお腹を抱えたミーシャの様子がいつもと違い、 外出しようとした私の後を追って来て「今日は家に居て」と催促するのです。

 これはいよいよ出産が近い!と、押入ににわか作りの産所を作ってやり、私は押入の前で居眠りしながら待機。すると昼前になって、蚊の鳴くような声で 「ミャー、ミャー」いう子猫の声が。
そっとふすまを開けて見ると真っ黒な子猫が生まれていました。

 お父さんはやはりお隣のクロちゃん?。結局、夕方までかかって5匹の赤ちゃんを無事産みました。 中にはへその緒の先に胎盤を付けたままの子もいて、にわか助産師の私も大忙し。

 子猫の色は黒、黒のブチ、茶色が2匹、純白とバラエティに富んでいます。 お父さんになり損ねたうちのムサシは2階の部屋でフテ寝。どうせなら、ムサシの子だったらもっとよかったのにと悔やまれます。

 ミーシャは初めての子育てなのになかなか世話が上手です。かいがいしく子猫を舐めては清潔に保ち、大息をつきながら授乳している姿はうっとりするぐらい美しい。

 寝食、トイレも忘れての子育てでは、母猫の健康が心配と思われたのですが、ミーシャはそのあたりのこともよく心得ていて、子猫が寝た瞬間を狙って、庭に出掛けて用を足し、ついでに 野原を一巡りして気分転換も図っています。

 ミーシャが子どもを産む直前、一時危篤状態にまで陥った私の母は奇跡的に命を取り留め、今は病院で静養中です。そして、その空いた部屋にミーシャが新しい生命を持ち込んでくれたことは、日ごろあまり宗教心のない私でも、そこに“神の賛美”を見ないわけにはいきません。猫とはいえ“命はつながっている”という、霊的な事実が存在しているようです。

 2年前、山の中に捨てられていた子猫のミーシャを拾った時、この子猫がやがて、母に取り付こうとしていた死に神を見事退散させてくれることになるなんて、想像もできないことでした。

本誌:2007年6.11号 12ページ

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