WEB VISION OKAYAMA

連載記事

洋食の”やまと”

 岡山・表町界隈で買い物を済ませ、「さて昼飯でも」と思うとなかなかあるようでないのが気楽な食事処です。そんな中、オランダ通りにある洋食の”やまと”はとても貴重な存在。名物の豚カツ、ハヤシライス、ラーメンなど根強いファンが昼時には行列を作っています。

 カウンター越しの厨房で寡黙に料理を作っているオヤジさんは40年前、高校で同学年だった大和君に違いありません(話し掛けたことはありませんが)。

 美人で愛想のいい女将さんは奥さんのようです。厨房にはもの静かな若者もいて料理の下ごしらえをしています。色白で”しゅーっ”とした顔付きはどことなくオヤジ似。

 女将さんに勘定を渡しながら、「息子さんですか?」と尋ねたら「はい、店を継いでくれると言っています。三代目になります」と嬉しそうに語っていました。

 注文を聞いて冷蔵庫から豚肉を取り出し、衣をつけ、程よく揚げて特製デミグラスソースをかけた豚カツ。奇をてらった料理や流行のメニューはなくとも、ひとつずつの料理が手早く丁寧に作られていくのを眺めるのは楽しいもの。

 私があえて大和君に高校時代同学年だったことなど話し掛けないのは、そんなことをすれば店に行くのに気を遣うようになって、かえって足が遠のいてしまう自分の因果な性格が分かっているからです。

 おしゃれなレストランが雨後の竹の子のように出現しては消えていくグルメ時代にあって、昔と変わらずいつでもそこにある洋食屋さん、三代目君にも伝統の味をしっかり仕込んでください。

本誌:2006年6.12号 20ページ

PAGETOP