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ライトアップ

 大原美術館など、倉敷川に沿って立ち並ぶ美観地区の建物が10月中旬からライトアップされることになりました。照明デザイナーは東京タワーやレインボウブリッジの照明を手がけた石井幹子氏。ところが本格ライトアップに向けて試験点灯したところ、白壁に反射するライトが明る過ぎるという問題点が発覚。

 昭和の時代、ネオンの怪しい光が誘蛾灯のように仕事帰りのお父さんたちを惹きよせていました。しかし今や低電力・高輝度のLED(発光ダイオード)電飾が町を真昼のように照らし、ムードや余韻、夜の闇にひそむ蠱惑(こわく)など入り込むすきがありません。

 かつての日本建築は、外光が室内に無制限に入ることを極端なまでにきらい、抑制のきいた空間を作ってきました。夕暮れの薬師寺の東塔を「凍れる音楽」と絶賛したのは、昭和初期に日本を訪れたドイツの建築家、ブルーノ・タウトです。

 もしタウトが、昨今のお城でもお寺でも夕暮れになると強烈な光でライトアップしてしまう風潮を見たら、日本人は世界で一番野蛮な文明人であると嘆くに違いないでしょう。

 1971年、花の都パリに初めて行った時、街の暗さに驚きました。ホテルの部屋も暗い、レストランではろうそくの火がゆらめく中、人々は声を潜めてささやきあう。街路灯がある場所では車のヘッドライトも禁止でした。そういう背景があってこそ、控えめに照明された夜のエッフェル塔やノートルダム寺院が絵になります。

 倉敷のライトアップは照度をずっと落として白壁が闇夜にうっすら浮かぶ程度にしてもらいたいものです。

本誌:2005年10.10号 14ページ

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