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雪のにおい

 雪深い新潟生まれの母は人生のほとんどを雪に縁のない岡山で送ってきたせいか、冬になるとよく「雪景色が見たい、雪のにおいを嗅いでみたい」と殺風景な冬枯れの景色を窓越しに眺めながらつぶやいていました。

 母の遺伝子をしっかり受け継いだ私も冬になると一度は雪景色が見たくなり、県北に大雪が降った日の翌日、国道180号線沿いに鳥取県境まで雪見ドライブに出かけました。

 新見を過ぎても雪は見られなかったのに、県境の明地トンネルを越えたら突然の雪国。ときおり視界が開くと江府盆地からそそりたつ大山の大パノラマが遠望されました。

 家々の屋根には数十センチもの雪が積もり、国道だけがアスファルト面を見せているだけであとは一面の銀世界です。美しい日本の冬。しかしながら雪に埋もれた家々を見てつくづく岡山県は恵まれていると思いました。

 屋根の雪降ろしをしていたお年寄りが滑って落ちて大けがをしたなどという悲しいニュースを聞かなくすみます。道路や空港の除雪作業といった行政負担もわずかなものでしょう。

 豪雪に限らず岡山県は地震、河川の氾濫、干害など自然災害がほとんどありません(昨年の連続台風襲来を例外として)。そういう風土の岡山県人はどれだけ温厚でのんびり構えているかというと、実体は逆で「理屈っぽい」、「エゴイスト」、果ては「日本のユダヤ人」などと他県の人からみるとあまり評判はよろしくない。これは住民が一致協力して闘うべき自然の脅威が少なかったことを考えると当然のことかもしれません。
 
 今年も雪国を見ることができたことに満足して車をUターンさせました。道が凍りつくとノーマルタイヤの車では岡山に帰れなくなりそうだったからです。

本誌:2005年3.21号 14ページ

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