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エリートの転落

 女子高生ではないけど、思わず「ウッソー!」とうなってしまった事件が起きました。経済評論家で人気コメンテーターとして知られる早稲田大学大学院教授が女子高生のスカートを手鏡で覗いて現行犯で逮捕されたというのです。

 エリート中のエリートとして学問的な業績もすばらしいし、テレビでも日本経済の問題点をソフトな語り口ながらシャープに切り込む論客として主婦層にも絶大な人気を誇っていました。

 その最先端を突っ走るエコノミストが何ともローテクな手鏡で女子高生のスカートを狙っていたというギャップの大きさにほんとうに驚かされました。大学教授の犯罪というより中学生のいたずらといったレベルの行為です。

 地位、名声、富、学問的業績、まだ43歳という若さと端正な顔立ち、何一つ欠けるものがない!しかしながらこの「何もかもが完璧」というのは案外くせ者です。日本人のするどい美意識はそのあたりのことに昔から気がついていて、骨董品でも完璧なものよりちょこっと傷があるものをかえって珍重してきました。その方が現実感があるからでしょう。

 教授は43歳にしてこの世で得られるほとんどすべてのものを手に入れてしまった結果、日常生活から現実感、生活感を失ってしまっていたのかもしれません。

 先生にとっては、思春期の性的衝動まで犠牲にして勝ち得た富や名声は本当はむなしかったのではないか、理性や知性の中に埋もれてしまった情熱、心の躍動を取り戻すためにはいったん「死んで」生まれ変わる以外方法がなかったんじゃないか、そんなことが思われます。

 人生とは才能に恵まれた人にとってもなかなか難しいものであることを思い知らされた事件でした。(康)

本誌:2004年4.21号 19ページ

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