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モウ ケッコウ

 坂口厚生労働大臣が「牛やニワトリはモウケッコウ」とおやじギャグを飛ばしていました。鳥インフルエンザが京都にまで飛び火し、業者が当局に報告を怠ったことで、事件は人災の様相を呈してきました。本当に「もう結構」と言いたいのは、そういう肉や卵を知らないうちに食べさせられた消費者でしょう。

 養鶏場に残された十数万羽のニワトリを殺処分するにあたって、京都府庁の職員が多数動員されました。暴れる鶏にたじろぐ府職員、作業は遅々として進みません。気分が悪くなって昼食の弁当に手を付けられない職員も続出のようです。

 病気が出れば一羽残らず殺処分してしまうというやり方は、感染の押さえ込みには有効でしょうが、鳥の病気解明にとってはせっかくの機会を逸しているように感じます。いきなり全部殺処分するのではなく、せめて1棟だけでも餌を与え続けて経過観察できていたらと思います。

 幸か不幸か、たいていの大規模養鶏場は人里離れた山の中にあるし、密閉式の鶏舎は外部から野鳥や鼠などが出入りするのを防ぐ構造になっています。こうして観察すれば、おそらく20万羽すべての鶏が死ぬわけではないでしょう。

 生き残った鶏を詳しく検査して、(1)ウィルスを寄せ付けなかったグループ、(2)ウィルスは持っているが発症しなかったグループ、(3)発症したが自然治癒したグループ、等に分けて遺伝学的、免疫学的特性を解明する。そしてインフルエンザに対し抵抗力のある個体を判別し、それを親鳥にしていけば、将来、鳥インフルエンザに脅かされることも少なくなると思います。

 行政当局も家禽の専門家も繰り返し「卵や肉は安全です」と言うだけで、科学的な取り組みが後回しになっている印象を受けます。鳥インフルエンザの研究にとって80年ぶりに訪れたチャンスを逃しているのは残念でもあるし、また病気を解明することこそが「処理された」鳥たちの霊にむくいる唯一の方法なのではないか、大臣が「モウケッコウ」と言うのはまだ早過ぎるような気がします。(康)

本誌:2004年3.11号 22ページ

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