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連載記事社説

記者が伝えるべき視点とは何か

 与党が過半数割れに追い込まれた先の衆議院選挙、トランプ氏の圧勝に終わった米国大統領選と大きな選挙が続き、さまざまな言論空間で左派と右派の主張が激しくぶつかるケースが目立つ。「どうしてこれほど対立が深まるのか」と不思議な想いを抱いていたのだが、弊誌11月18日号掲載のコラム「スローライフ」を読んで「なるほど」と合点がいった。

 ロシアの文豪ドストエフスキーの名著「罪と罰」について、主人公の貧しき大学生が「自分のように有能な人間は新たな世の中の成長のためなら社会道徳を踏み外す権利がある」という選良思想を持ち、世の中のくずと思っている金貸しの老婆を殺してしまい、次第に罪の意識に目覚めていく―というストーリーを紹介したくだり。

 社会的にそれなりの地位にあると思われる人物の、あまり生産的とは思えない、ときには悪口の言い合いにも感じられる論争の背景には、150年前の小説の世界と同じ「選良思想」に似た感覚があるのではないか。

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本誌:2024年11月25日号 17ページ

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