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連載記事杉山慎策の経営学考察

国富論を読む1

 近代経済学の基礎を作ったアダム・スミスは「国富論」を1776年に発表した。この年はアメリカ独立宣言の年であり、大きな変化が起きた年でもある。「国富論」の正式な英語のタイトルは“An Inquiry into the Nature and Causes of the Wealth of Nations”である。「国の豊かさの本質と原因についての研究」が正式なタイトルであるが、通常「国富論として知られている。

 タイトルからも明らかなように「国全体の豊かさ」を高めるためにはどうすればよいかという視点で書かれている。これに対し、経営学は「企業や組織の価値創造」がテーマとなる。この関係を簡単に表で表すと下記のようになる。

 経済学は国全体を対象とするのに対して、経営学は国の一構成要素である企業や組織を対象とする。本稿は「国富論」を経営学の視点から読み解こうとするものである。
スミスは「国富論」の序論において「豊かさとは何か」について定義している。その国にとっての「豊かさ」とは「その国の国民が一年間に労働により生み出したものかあるいはその一部をつかって外国から購入したものを人口で割って、その量が増えたかどうかで豊かさを判断する」と定義している。これは正に今日の一人当たりGDP(国内総生産)に該当する。

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本誌:2023年12月4日号 19ページ

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