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経営者の決断杉山慎策の経営学考察

山内容堂10

 土佐藩内では武力により討幕を主張していた乾退助も最終的に同意し、土佐藩はこの「大政奉還」の方向でまとまった。容堂の建白書は下記のとおりである。

 誠惶誠恐、謹で建言仕り候。天下憂世の士、口を噤して敢えて言はざるに至り候は誠に懼るべきの時に候。朝廷・幕府・公卿・諸侯、旨趣相違の状あるに似たり。誠に懼るべきの事に候。此の二懼は我が大患にして、彼の大幸なり。彼の策、是に於いてか成ると謂つべく候。是の如き事態に陥り候は、その責め至竟誰に帰すべきや。併ら既往の是非曲直を喋々弁難すとも何の益かあらむ。唯願わくば大活眼・大英断を以て、天下万民と共に一心協力、正明・正大の道理に帰し、万世に亘って恥じず、万国に臨んで愧じざるの大根底を立てざるべからず。此の旨趣前月上京のみぎりにも追々建言仕り候心得に御座候えども、何分阻当の筋のみこれあり、そのうち図らずも旧疾再発仕り帰国仕り候。以来起居動作といえども不随意の事に成り至り再上の儀相調い申さず候は、誠に残憾の次第にて、ひたすら此の事のみ日夜焦心苦思仕りまかりあり候。因て思存の趣一-二家来共を以て言上仕り候。唯だ幾重にも正明・正大の道理に帰し、天下万民と共に、皇国数百年の国体を一変し、至誠を以て万国に接し、王政復古の業を建てざるべからざるの一大機会と存じ奉り候。猶また別紙とくと御再覧仰せつけられたく、懇々の至情黙止しがたく、泣血流涕の至りに堪えず候。

 慶応三丁卯年九月 松平容堂(出典:『山内容堂』平尾道雄著)

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本誌:2022年6月6日号 25ページ

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