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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

反骨の老女医U先生

 行きつけの喫茶店で幼なじみとよもやま話をするのがほぼお決まりの日課になって、もう20年近い歳月が流れました。年寄りが集まれば体の不具合の披露合戦になるのが常、近くの病院や診療所の評判やうわさ話のオンパレードです。コロナ騒動以前のことですが、そんなおしゃべりの中で近場の診療所の女医U先生のことに話が及びました。もう80に近いお年だと思います。

 「U先生はとても優しく親身になって診てくれるので子育ての間中ずっとお世話になりました」と友人の奥さんがおっしゃいます。続けて、「だけどU先生はどんな種類であれワクチンは打ってくれないので、さすがにこのごろはよその診療所に行くことにしているのよ」と。

 この話を聞いて私は思わず笑ってしまいました。U先生とは直接の面識はないのですが、実はU先生が小学校6年生のとき私の父がクラス担任をしていて、夕食のときなどに「Uちゃんは本当に聡明な子だ」とよく話題にしていました。Uさんのお父さんは芸術家肌のちょっと変わった人でときおり我が家を訪ねてきては長居するのが子ども心に私の不満でした。お客様がいる間はじっとしているよう母に言われてもそこは子どものこと、私がちょっとはしゃいだりすると、Uおじさんの雷が落ちます。「畳の上をジタバタするねえ、ほこりが立たあ!」と。

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本誌:2021年5月24日号 13ページ

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