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自己肯定感が低い人の道案内法

 本屋さんを歩けば、自分を好きになる、ちゃんと言い返せる、気にしすぎが変わる、劣等感を手放す、こんな言葉が見出しにあふれているコーナーがあります。そしてそのコーナーはどんどん大きくなっているようにも感じています。それだけ、ありのままの自分を認め受け入れることが難しいのかもしれません。

 自己肯定感が低いと言われる方達は、人からどう思われているかに関心を寄せます。そのことは空気を読むことや先回りする気遣いなどにつながり、プラスに働くことも多いのです。しかし、人からどう思われるかを気にしすぎるということは、周囲の人を信頼していないとも言えます。信頼されていないと知ったら、周囲の人は残念な気持ちになるかもしれません。

 その気遣いは、周囲の人の状況に矢印が向いているのか、それとも、嫌われたくない、正しくなかったらどうしよう、浮きたくない、という思いであるならばあくまで心のベクトルは自分向きで、周囲の方に気を使っているようで、実は周囲の方のほうがあなたに気を使っているということに、なってしまっているかもしれません。周囲の人を信頼するということ。気遣いのベースはここにあってほしいと願います。そして、信頼していいんだよと伝えることも大切です。

 読者の中には、若いメンバーの指導役を担当している方も多いのではないでしょうか。自分の意見や自分の思いを積極的に言うことが少ないと感じられたり、自分から積極的に提案をしたりと言うことが少ないと感じている方は多いようです。しかし、一人ひとりに向き合ってみるといい意見を持っていたり、ちゃんと深く考えていることがあったりします。外すことや浮くことを怖がり、人前で指摘される修正されることを避けたい気持ちがあるのかもしれません。そんな若者たちに疑問を抱いたり不満を感じている指導者の方もいらっしゃるでしょう。

 私ではない誰かの発言を待つ、思っていることがあっても率先しては発言しない。その姿勢は受け身の姿勢です。積極的であるかどうかはその人の個性にもよるところがあるでしょう。控えめな人に積極的にしろと強制する必要はなく、サポータータイプにはサポータータイプの魅力や特性があり、その特性が発揮できる場があればいいと思います。

 しかし、意見や考えがあっても発することができないのであれば、それは先輩やリーダーが安心できる場を作ってあげることもできると思うのです。どんな意見であっても、どんなものの見方であっても、今のその人の中ではベターだと思って差し出されたものであるならば、まずは“ヨイ出し”から始めてほしいのです。

 先輩やリーダーから見ると、未熟な点が多々見えるでしょう、それでは失敗すると言う未来が見えるかもしれません。そこを指摘しして指導すること、より良い結果を彼らが出すために道案内することが大きな価値があることは変わりません。しかし、その意見やアイデアのなかに彼らなりに良かれと思ったポイントがあるはずなのです。

 アドラー心理学では「不適切な行動にも目的がある」と考えます。未熟な意見や表面的な意見しか言えない、という彼らの状況にも彼らなりに善なる目的があるのです。その善なる目的の方に先に焦点を当ててあげるのです。その善なる目的を汲み取った後で、指摘や指導が入ると、素直にその意見を吸収できるようになる。つまりあなたの意見には価値があり周囲の人は信頼できる人だ、とまず伝えてあげることなのです。

 不思議なことがあります。わたしは講師力を育成したり、話し方のご指導をしたりします。プロの道を進むわけですからご指摘することご指導することの方が多いのです。しかし「できているところ」「伸びているところ」に焦点を当て、不適切に感じるところも、どんな意図があったのかを先に確認してからご指摘するようにすると、響子さんからはまったくダメ出しされない、と言われることがあります。ヨイ出しはほんの前置きでご指摘部分がほとんどだったとしても、なのです。まずは善なる目的に焦点を当てて、その方に安全な場であることを伝えることから始めてみてください。

本誌:2020年11月9日号 21ページ

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