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巻頭特集[相続・事業承継特集]金融機関 コロナで変わる事業承継支援のあり方

すそ野拡大に仲介サイトと提携加速 経営改善伴う伴走型も

  • 中国銀行、トマト銀行、日本政策金融公庫が事業承継などで連携

 コロナ禍で企業の事業承継への関心が高まる中で、岡山県下の金融機関は支援策を拡充している。後継者、譲渡先探しにM&Aマッチングサイトの提携先を広げているほか、経営悪化で後継者がいても現状では引き継ぎが困難な企業に対し経営改善を伴った支援にも取り組みだした。もともと経営者の高齢化で喫緊の課題となっていた事業承継だが、新型コロナは高齢者が重症化しやすく、生涯現役とやる気満々の高齢経営者も考えを改め承継を真剣に考えるようになってきたため。地域金融機関にとって経営基盤維持に向け待ったなしのテーマだ。

 「抜群の立地!地域密着型サービスの介護施設」(譲渡理由・後継者不在、譲渡希望額5000万~7500万円)、「第二の故郷として親しまれるお宿」(譲渡理由・後継者不在、譲渡希望額2000万~3000万円)―。事業承継やM&Aを仲介する業者のマッチングサイトに掲載されている岡山県内の企業(匿名)の売り案件。こうした専用サイトが今や全国的に花盛りだ。

 エリアの枠を越えて売却先を探すことができ選択肢が広がる利点のほか、コロナ禍で金融機関担当者の企業訪問が制限されている中での非対面サービスとして、県下の金融機関でもサイト運営業者との提携が加速している。

 登録件数5万件以上を誇る国内最大級のM&Aマッチングサイトを運営する㈱トランビ(東京都)と、2018年の笠岡信用組合(笠岡市)を皮切りに㈱トマト銀行(岡山市)、おかやま信用金庫(同)、玉島信用金庫(倉敷市)など県下7信用金庫が提携。今年8月には㈱中国銀行(岡山市)も提携した。

 中国銀行では同時に仲介サイト「バトンズ」「M&Aプラス」などを運営する3業者とそれぞれ提携した。各サイトで強みが異なるためで選択肢の拡大が狙い。同行は従来投資銀行業務として主に中堅以上の企業のM&Aを仲介してきたが、中小企業にも事業承継のニーズのすそ野が拡大してきたため、小規模事業者をも対象にしたこれらのサイトと提携した。他の金融機関でも選択肢拡大を狙い、「今後提携先を広げたい」(玉島信用金庫)というところがあり、まだまだ広がりそうだ。

 コロナ禍で3密が避けられる地方の良さが見直される中で、後継者探しに大都市部からのUターン希望者を狙う金融機関も出てきた。笠岡信組は第一勧業信用組合(東京都)など大都市部の信組との情報交換を活発化させている。「地方の事業者は第3者承継で県外のまったく縁のない人へ譲渡することにはやはり抵抗があるよう」で少なくとも岡山に地縁のあるUターンに着目した。

 一方で企業側に後継者がおり事業承継の意志があっても、新型コロナで財務内容が悪化しているため円滑な承継が難しいケースも多い。そうしたケースを想定し、経営改善、事業再生と合わせた長期伴走型の支援を行う動きも出てきた。

 中国銀行では10月1日に関連会社のおかやまキャピタルマネジメント㈱(岡山市)内に「コンサルティンググループ」を新設した。企業再生で実績のあるロングブラックパートナーズ㈱(LBP、東京都)と提携し専門ノウハウを活用。事業承継を主なテーマとし銀行本体では困難な専門性の高い案件を主に手掛ける。事業性評価をもとに経営計画を策定し業務改革、生産・物流現場などの改善を行い承継につなげていく。そのため外部との連携も強化。高度な専門性ゆえに弁護士、公認会計士、税理士など士業をはじめ、販路開拓では流通業者、現場改善では専門のコンサルタントなど連携の幅を広げていく。こうした経営改善の必要性はほかの金融機関も強く感じており、「何らかのやり方を考えていきたい」と言う。

 実際に新型コロナの影響で近い将来に廃業の増加が懸念されるからだ。コロナ禍による業績悪化に対し、政府系も含め各金融機関は当初3年間実質無利子の融資を提供したことで、各企業は当面の資金繰りにとりあえずめどが付き一服した格好で、各機関とも「たちまち廃業の動きは聞かれない」というが、数年後には返済猶予が終わり有利子負債に転じ、返済できるのか不安が残る。

 各金融機関が事業承継に取り組む中で、課題も浮き彫りになってきた。第3者への譲渡ではオーナー個人の資産と事業用の資産の分離が困難なこと、経営者個人への保証でリスクを負うようになるため後継者のなり手がいなくなるといった点だ。これらの解消に取り組んでいくが、せっかくコロナで注目度が高まっても、そもそも経営者自身が事業承継の重要性に気付かなければ意味がない。「判断をためらい最終的に追い詰められた段階で相談にくる」ことも多い。その段階ではどうにもならず金融機関の担当者も頭を抱える。

 後継者不在でコロナで業績が落ち込み返済できないとなれば、一気に廃業が増える懸念がある。そうなると金融機関にとっても顧客数が減り、自らの経営基盤自体が危うくなる。そのため、今後事業承継の啓発活動をどうするかが最大の課題となりそうだ。

国も強力に事業承継を後押し

 国は、事業承継の支援策を拡充している。一部で取り組む動きが出てきたが、潜在的な後継者不在の中小企業の数(127万社)からみるとまだまだ不十分で強い危機感を抱いているからだ。

 親族に後継者がいないケースが多く第3者への承継を支援するため、新たにM&Aの仲介手数料などを一部補助する「経営資源引継ぎ補助金」を創設した。同手数料が高額で中小企業には負担が大きかったため。

 また、承継の妨げとなっていた後継者の経営者保証を不要とする信用保証制度も創設。4月から各県の信用保証協会で取り扱いを開始した。一定の要件を満たせば企業が同協会に支払う保証料負担も軽減する。

 さらに承継後の経営力強化の支援も拡充する。事業承継を契機に経営革新、事業転換などに取り組む中小企業の設備投資などを支援する「事業承継補助金」の支援内容を拡充した。県内では今まで52企業・個人の事業が採択されている。

 岡山市も独自に事業承継支援補助金を創設。経営課題の把握、事業承継に向けた経営改善、事業承継計画の策定などの費用が対象。補助率2/3で上限100万円。

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