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連載記事スローライフ~午後4時の窓辺から~

あっぱれ外国人熟年カップル

 お彼岸過ぎ、散歩がてら吉備津彦神社に出かけてみました。閑散とした境内には参拝客はほとんどおらず、桜の花もまだなので神社全体が静寂につつまれていました。そろそろ帰ろうと思って参道を振り返ったら石段をゆっくり登ってくる初老の白人カップルがいました。欧米でコロナウイルスが猖獗(しょうけつ)を極めているというのに今どき外国からの観光客とは?と思い声をかけてみました。

 「私はスペイン人、彼はイタリアのミラノ出身。ずっといっしょに旅しているの!」

 今、世界中で一番やばい国からやってきた旅行者ではありませんか!興味津々、休憩所の椅子に腰掛けてゆっくり話を聞いてみると彼らはおよそ日本人には想像もつかない永遠の旅人たちでした。2人は夫婦かパートナーでしょう。

 今から17年前に、男性は50歳でそれまで自営でやっていた不動産ビジネスを売り払い自宅も処分、金利の高いオーストラリアドルで預金しその利息で悠々自適、女性は動物病院のスタッフだった。2人はメキシコに渡りキャンピングカーを購入して、この17年間ヨーロッパ、オーストラリア、南北アメリカ、アジアを隈無く旅しているといいます。
日本には何度も来ているらしく、今回は3月初旬にメキシコから来日したのでまだ検疫上の問題もなくすんなり入国できたそうです。日本では、キャンピングカーはレンタカーを借り全国を旅しているとのことでした。日本の文化にも詳しく私が「お寺と神社の区別がつきますか?」と聞いたら「寺院は仏教、神社は神道の神様……」とちゃんと知っていました。私は冗談交じりのウンチクを傾けました。「もっと簡単に識別する方法があります。金閣寺など拝観料を取るのがお寺、いつでも無料で参拝できるのが神社です」。

 「17年もいっしょにキャンピングカーで旅していて飽きることはないのですか」と尋ねてみました。「彼は私にとって最高のパートナー」、「彼女といっしょにいれば退屈なんかしないよ」と言って、私の目の前でチュッと熱くキスしてみせました。故郷のイタリアやスペインにいる親戚縁者のことを心配しつつも、人生を謳歌している南欧カップル。コロナで足止めを食らおうが豪ドルが安くなろうが彼らはそんなことは気にとめていないようです。

本誌:2020年4月6日号 13ページ

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