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連載記事マネーの道しるべ 61

素敵な贅沢

  • 森康彰氏

 阪神淡路大震災をきっかけに私たちは、災害に対する対応力を身に着けてきました。必要な支援物資を迅速に届け、休みともなれば復旧支援活動のためボランティアとして現地に赴き労働力を提供するなど、思考停止に陥ることなく行動することができるようになりました。しかし、今回の新型コロナウィルスの対応では思考停止に陥った行動が目に付きます。無意味にトイレットペーパーを買い占め、不要不急の移動や会合を取りやめてしまっています。その結果、諸外国に比べ感染拡大は最小限にとどまっているようです。では、経済はどうでしょうか。

 ちょうど、歓送迎会シーズンだったこともあり、飲食店やホテルなどはキャンセルが相次ぎ大きな打撃を受けています。不要不急の移動を控えたことで交通機関も売り上げを落としています。地域の経済、社会を守るためにも、疫病に対しても知恵をしぼり、手を取り合って挑むことが必要なのではないでしょうか。

 新型コロナウィルス問題に対して、個人的には、社会の在り方そのものを考え直す機会なのではないかと感じています。これまで日本は、赤字国債を発行し続けながら消費を拡大してきましたが、その消費の仕方自体が正しかったのかと。言葉を変えると、正しいお金の使い方をしていただろうかということに向き合う必要があると思います。衣食住という生活の基本的なものでさえ、「安さ」というものを追い求めた結果、全体の所得は上がらないまま、誰も豊かにならない日々を重ねてきたのではないでしょうか。以前、美作産の松茸と千屋牛ですき焼きをし、宮下酒造㈱の日本酒で乾杯した写真をSNSに投稿したことがありました。すると、かつての恩師から「そんな贅沢をしたらバチが当たる」というコメントが。では、中国産の松茸とオージービーフですき焼きをし、輸入ビールを飲めば良かったのでしょうか。お金を誰に払うのかという発想が欠落すると、地域社会は疲弊するばかりです。

 考え方として京都人の思考が一つの好例ではないかと思います。以前、京都でタクシーに乗ったとき、「京都では湯豆腐をすくう網だけを作って生計を立てている人がいます。同じようなものはどこでも売っているのですが、私たちは1万円払ってでもその人の作っている網を買うんですよ。その人にも生活がありますからね」と話してくれました。私たちがユニクロの服を買うとき、それは人件費の安い、産業の未熟な国の労働者を豊かにしているかもしれませんが、確実に繊維業を営む児島の人々の生活をおびやかしていることを忘れてはならないと思います。

●森康彰●2年間、保険代理店に勤めた後、2008年に保険コンサル会社㈲e.K.コンサルタントを設立。2014年に東京支社を設けるなど、首都圏へも業務を拡大中。 敬愛する人物は、稲森和夫、立川談志。

本誌:2020年春季特別号 13ページ

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