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岡山市のブランド・ストーリー

 内外の有力企業のブランド・ストーリーを見てきたが、視点を変えて岡山市のブランド・ストーリーを考えてみたい。日本の有名な観光都市はしっかりとしたブランド・ストーリーを持っている。筆者は岡山市と名古屋市は非常によく似ていると考えている。両市ともに長い歴史があり、豊かな広い土地を持っている。多くが埋め立て地のために塩分を含んだ土地でも栽培しやすい木綿の栽培が行われ、繊維産業が発展した。名古屋は戦後繊維から産業の裾野の広い自動車産業への転換に成功している。両市とも歴史のある由緒正しい城下町である。岡山市は日本の政令市の20大都市の中でどのようにポジションを獲得すべきなのであろうか。岡山市は第六次総合計画で「未来へ躍動する桃太郎のまち岡山」を都市づくりの基本目標に掲げている。

 ご存知のように「桃太郎の伝説」は日本各地に存在する。日本桃太郎会連合会は桃太郎に関係する団体が加盟しており平成20年(2008年)に結成された。この団体に所属する自治団体としては、岡山市の他に、犬山市、高松市、富山市、田原本町、大月市などがある。日本の昔物語の中でもっともポピュラーな物語の一つであり、韓国や台湾でも年配の方と話をするとほとんどの方がこの桃太郎の物語を知っている。しかし、その桃太郎と岡山とを連想する人は皆無と言ってよい。グーグルで検索すると「岡山」は1億8000万ヒットであり、「岡山市」は1120万ヒットに対して、「桃太郎」は1600万ヒットで、「岡山市」よりヒット数が多い。因みに、「桃太郎」を“momotaro”にして英語環境で検索するとヒット数は478万であり、“peach boy”にすると4240万ヒット数になる。「桃太郎」のイメージを上手に「岡山市」で独占できればその影響が大きいことが容易に想像できる。

 同じ岡山県でも大原美術館や美観地区を持つ倉敷市と比べ岡山市は残念ながら戦災のために江戸時代から繁栄した歴史遺産が消滅した。同時に戦前国宝でもあった岡山城も焼失した。戦災に遭っていなければ恐らく岡山市は世界遺産の町として全く違った形で繁栄していたかも知れない。平成25年度に岡山県が実施した観光満足度調査でも岡山のイメージはそもそも想起されないことに最大の課題がある。岡山についての典型的連想としては「岡山県の名前は有名だが、これが岡山というものが思い当たらない」というのが恐らく多くの日本人の岡山や岡山市についての正直な声なのであろう。岡山の食べ物では、①桃、②吉備団子、③マスカット、④ぶどう、⑤ままかり、などが上位に挙げられている。鳥取が砂丘、香川がうどんとして連想されるように、岡山と言えば「桃太郎」が想起されるようになれば必ず訪れる観光客は増えると考えられる。

 現在岡山と桃太郎とを結びつけるコミュニケーション戦略を採用されているようであるが、それが一段落したら今度は「桃太郎」に岡山市の観光名所や名産の紹介をさせればよいと考えている。後楽園、岡山城、林原美術館、オリエント美術館、西川緑道公園、吉備津彦神社など岡山が誇る文化遺産がある。吉備線の愛称も2016年から「桃太郎線」に変更されている。将来のLRT化は一先ず置いても、吉備津彦神社につながる「桃太郎線」を大切にすべきである。また、岡山商工会議所が展開している「フルーツパフェの街おかやま」は重要なキャンペーンである。平成21年(2009年)開始された当時39店であった店舗が昨年度は51店舗に増大したとのことである。

 最終的に「桃太郎」で多くの消費者に岡山市を想起させ、岡山市に来れば後楽園、岡山城、吉備津彦神社などを見学していただき、吉備団子だけでなく多様なフルーツを味わっていただくように仕掛けるべきである。

 この戦略は恐らく間違ってはいない。桃太郎と岡山市が多くの人から連想されるようになるまで長期的にしっかり継続していくことが大切である。また、そのためのKPIとして現段階での岡山市と桃太郎の想起率を把握しておき、今後毎年再調査をしてどれくらい想起が浸透したかをチェックすることが重要となる。

本誌:2018年3.5号 19ページ

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