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終活セミナー

 平日の昼下がり、親の古家でぽけーっとテレビを見ていたら電話が鳴りました。固定電話にかかってくる電話の98%はあやしげな商品の売り込み電話です。

 しぶしぶ出たら案の定、知らない女性のさわやかな声でした。すぐに切ろうとしたのですが一瞬ためらっていると、「こちらはXX銀行お客様相談センターです」などと口座がある銀行名を名乗っていたので話を聞くことにしました。どうやら銀行も昔ながらの殿様商売では儲からなくなってきているので積極的にご用聞きの電話をかけている様子です。

 「とくにお願いすることも、不便に感じていることもありませんが……」と、ことごとくノーサンキューを突きつけていたら、思いもかけないことを言い出しました。「今度、岡山で終活セミナーがあります。お席をご用意しますのでどうぞご出席ください」とのお誘いでした。

 終活など縁起でもないと断ろうと思ったものの本当のボケ老人になってからではもう手遅れで、今が終活適齢期なのかもしれません。銀行も個人情報データベースを見ながらターゲットを絞って電話をかけてきているのでしょう。

 セミナーが行われる日はたまたま私の誕生日で今度68歳になります。誕生日プレゼントが終活セミナーとは、悪い冗談ではあるけれど思わず「じゃあ参加します」と言ってしまいました。後日またそれがどんなものだったかご報告しようと思います。

 そんな話をカナダの従姉妹に電話したら、子ども達が独立してしまった夫婦2人にとって戸建ての家は大きすぎるのでシニア世帯向けの集合住宅に引っ越す準備をしている最中だと言います。たしかにそれぞれの部屋にバストイレがついた寝室が5つもある家では光熱費もばかにならないし、庭の芝刈り、真冬マイナス20度にもなる屋外での雪かきは苦痛だろうと思います。

 子ども達を育て人生の一番いい時期を何十年も過ごした家をあっさり売りに出し、コンパクトで便利な家に引っ越す決断をした従姉妹夫妻の行動はカナダでは当然の選択で、感傷にひたる話ではないようです。これこそ戦略的な終活です。それにひきかえ古い家とともになすすべもなく朽ち果てていくつもりの私にセミナーの講師はいったいどのようなアドバイスをしてくれるのでしょう?

本誌:2016年7.4号 13ページ

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