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ブランド・マーケティング

 前回資生堂の元社長である弦間明氏が著書「共に輝く」で述べられているラグジュアリー・マーケティングの8つの条件について述べた。再度ここに掲載する。
 1.歴史や物語があること
 2.研究と技術の蓄積があること
 3.高品質でふさわしい価格であること
 4.人から人に手渡しされること
 5.ブランドのポジショニングを高めるためにマーケティングに厳しい自己規制を行っていること
 6.創業者、経営者の人間性が見えること
 7.伝統を大切にしながら、絶えざる革新を行うバイタリティがあること
 8.世界的であること

 この8つの条件は「コルベール委員会の副事務局長であるクリスチャン・ブランカール氏との話に基づき資生堂なりに考えて整理したものである」(前掲書P177~178)と述べられている。基本的な考え方についてはコルベール委員会の理念が基礎になっている。

 ではこの条件について資生堂のケースに当てはめて詳しく見てみたい。最初の1の「歴史や物語がある」ということについて見れば、資生堂の名称は易経の「至哉坤元 萬物資生」(大地の徳は何とすばらしいものであろうか。全てのものはここから生まれる)に由来し、日本で最初の西洋式薬局であり、創業以来140年以上の歴史がある。従って、この条件は満たしていると考えられる。

 2の「研究と技術の蓄積」に関しては、資生堂は毎年売り上げの2%程度を研究開発費として計上し、米国のマサチューセッツ総合病院・ハーバード医科大学皮膚科学研究所との共同研究所も持っている。この条件についても満たしていると考えられる。

 3の「高品質でふさわしい価格であること」については現在の資生堂に照らし合わせれば疑念が生じる。戦前や戦後直後の資生堂であれば高級品に特化していたので問題はないが、数百円のティッシュペーパーから10万円を超えるような商品までもが同じ「資生堂」というコーポレート・ブランド名で展開されており、整理が必要と考えられる。

 4の「人から人に手渡しされる」は対面販売を基本とするということである。資生堂はかつて対面販売が主流であったが、70年代以降の売り上げ拡大期にスーパーなどにチャネル拡大し、現段階では実際に対面販売による売り上げの比率は全体の半分にも届かないのではないかと推測される。従ってこの条件も満たされていないと考えられる。

 5の「ブランドの自己規制」について見れば、資生堂はチャネルをスーパーに拡大した段階で既に自己規制を放棄していると考えられる。欧州のプレステージ・ブランドであるコミッティー・コルベールのメンバー企業のブランドはチャネル拡大をすれば売り上げ拡大を図ることは可能なことは重々承知しているが、簡単にチャネルを増やすことはしていない。ブランドの永続的繁栄を優先させている。資生堂はこの条件についても満たしていないと考えられる。

 6の「創業者や経営者の人間性が見えること」については資生堂の名誉会長の福原義春氏は創業者の孫であり、多方面で活躍され資生堂の顔として資生堂の創業の理念を具現化されている。この条件は満たしていると考えられる。

 7の「伝統と革新」は資生堂の場合140年の歴史があり、1897年の赤い化粧水と言われた「オイデルミン」の発売や1990年に発売したアルブチン配合の美白美容液「美白エッセンス」など多くの革新的商品を発売している。この条件は満たしていると考えられる。

 8の「世界的であること」について見れば、資生堂は戦前の中国やアメリカへの進出に始まり戦後もグローバルな展開を積極的に進めている。2014年には海外売り上げは50%を超えている。従って、この条件は満たしていると考えられる。

 このようにみると資生堂のブランド戦略は8つの条件の内下記の3つに問題が潜んでいると考えられる。

 3.高品質でふさわしい価格であること
 4.人から人に手渡しされること
 5.ブランドのポジショニングを高めるためにマーケティングに厳しい自己規制を行っていること

 ロレアルやP&Gなどのグローバル企業はこれをどのように解決しているのかを次回述べてみたい。

本誌:2016年4.4号 23ページ

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