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アジアインフラ投資銀行

 中国が提唱するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に日本が創立メンバーとして加わるべきかどうかいろいろ議論を呼びましたが、政府は参加を見送りました。現時点ではきわめて賢明な判断だったと思います。

 私はAIIB設立の話を聞いて一番に連想したのは「新銀行東京」の存在です。日本の金融業界がバブル崩壊後、巨額の不良資産を抱えてボロボロだった時代に東京都の石原知事が旗を振って2005年に開業した銀行です。もうとっくの昔に潰れたものと思っていたのですがこのコラムを書くのに当たって調べてみたらまだ細々と存続しているようです。

 普通の銀行なら絶対お金を貸さない物件に無担保、ほぼ無審査で融資を実行しわずか3年で1000億円の累積赤字を抱え事実上の破綻に陥りました。都民のお金をドブに捨てたというのに石原知事はもちろん誰一人責任を取った人はいなかったように記憶しています。

 AIIBは新銀行東京よりはるかに大きな問題を抱えていると思います。中国は日本が参加することを望んでいるようですが、その狙いはGDPに比例する巨額の出資金であることは言うまでもありません。そして使い道はアジアのインフラ整備と言っても勝算のない“中華帝国”再興の夢に寄り添うものに限定されることは火を見るより明らかです。貴重なお金がそんなことに使われる可能性がある正体不明の銀行に日本政府が同意しないのは、つい10数年前3メガバンクですら破綻するのではないかとヒヤヒヤした日本人にとって当たり前の話ではないでしょうか。

 AIIB騒動のおかげで既存の世界銀行やアジア開発銀行が発展途上国の資金需要にちゃんと応えていない現実も明らかになりました。日本が歴代総裁を送り出しているアジア開発銀行はAIIBに触発されてさっそくいままで融資審査に時間がかかっていたのを大幅に短縮する改革案をまとめました。世界銀行、IMFでも同じような改革がなされるのではないでしょうか。

 中国が覇権・拡張主義ではなくアジア諸国の均衡ある発展に本気で取り組んでいくことが確認されて初めてAIIBに参加しても決して乗り遅れなどにはなりません。アメリカのほかにも国際問題では良識ある政策をとることで定評あるカナダが不参加であることも心強い気がします。

本誌:2015年GW特別号 19ページ

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