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広島の土砂災害に思う

 広島市北部で起きた土砂災害の死者、行方不明者数は広島県警によると8月21日現在90人に上るそうです。上空からの痛々しい映像は水の力の恐ろしさをまざまざと見せつけていますが、住宅地の後背地の山はいかにもなだらかな丘陵といった感じです。今にも崖崩れがおきそうな急斜面が迫っているような場所ではないだけに、被害にあわれた地域の人には“まさか!”というやりきれなさがあることでしょう。

 しかし、テレビ番組に引っ張り出された地質学や土木工学の専門家に言わせると、土砂災害が起きた地域の土壌は花こう岩が風化してできたマサ土(真砂土)であり、強い降雨にあったら土壌表面が一気に流れ出す特徴があるとのこと。

 こんなことを聞くと広島周辺の山土が特異的に危ない印象をもちますが、マサ土は何も広島特有の土ではなく西日本に広く分布しているごくごく普通の山土です。

 有機質をほとんど含んでいない非常に清潔な土で、アカマツがよく育ちマツタケの生育にも適しています。岡山の白桃がおいしいのもこの土のせい。小学校の運動場の土もマサ土を入れているので校庭が非常に明るくすがすがしい。校庭だけでなく岡山や広島のなだらかで美しい山里の風景をいっそう晴れやかで解放的に見せているのもマサ土のおかげです。

 大学生になって初めて関東の土に触れたときは本当に驚きました。真っ黒で細かいほこりのような土。運動場で雨が降れば体操服が真っ黒になります。かっこいいはずの湘南の海の黒砂のおぞましさ!古里岡山の海の明るい砂浜が懐かしい!     といつも思っていたものです。

 さて、そのマサ土が広島に大きな災厄をもたらしました。広島市は岡山市と比較して平地が少なく、人口増に従って今回の悲劇が発生した安佐南区や安佐北区といった山間地に住宅地を拡大せざるを得なかった事情があったのはよく分かります。

 しかし、地滑りを起こすことが分かっているマサ土地帯を開発するのに当たって学者と行政は今回のような大災害の発生を予測していなかったのでしょうか。なにやら福島原発事故と同じように今回の大惨事も人災の側面があるように思いました。

 土砂に埋もれた我が家に残された子どもに呼び掛ける母親の悲痛な叫び声がいたたまれません。

本誌:2014年9.1号 17ページ

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