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ブランドの棲家

 人の住むところが「住家」で獣が棲むところが「棲家」。ブランドはどこに住(棲)んでいるのか。人と同じように扱うなら「住家」を使用すべきかもしれないが敢えて「棲家」を使用する。ブランドはある意味猛獣のように管理が大変であり、その意味から「棲家」の方が妥当と考える。

 ブランドについての誤解は多い。その第一が、「優れた製品」ができるとそれで「ブランド」ができたと錯覚することである。日本語は非常に便利で「工場で製造されたもの」を「製品」と言う。その「製品」が流通ルートに乗り店頭で消費者の目に触れるようになると「商品」となる。店頭に並ぶ多くの「商品」の中で消費者の頭の中に記憶されたもののみが「ブランド」となる。だから「ブランド」の棲家は消費者の頭の中ということになる。

 ブランドが消費者の頭に棲んでいるとすると、それを取り出し正確に理解することはなかなか困難である。マーケティング論や経営学がどちらかと言うと軽視されている傾向の強い日本では、ブランドというと「品質が高く」、「歴史があり」、「高価なもの」だと短絡的に理解されがちである。ブランドかどうかは、あるカテゴリーを思い浮かべる時にどのようなブランドが想起されるかにより決まる。例えば、「車」と言えば「レクサス」のような構図が成立するかどうかが鍵となる。カテゴリーで真っ先に想起されるブランドをトップオブマインドという。また、「ああ知っている」というレベルであれば認知という。想起と認知については稿を改めて詳述する。

 このブランドの認知や想起を調べない限りブランドの管理はできない。調べるためにはかなりの費用がかかる。例えば、岡山だけではなく、東京や大阪、あるいは、モノによれば全国で調べたり、また、男女間の差、あるいは、年代別、職業別、所得別など調べだすと切りがない。定量的に分析したい場合それぞれのセグメントに対してサンプル数は100程度必要となる。だからブランド調査にはかなりのサンプル数が必要となる。サンプル数が増えれば当然コストも増加する。

 マーケティングに強いと言われているグローバル企業のP&Gやユニリーバ、ロレアルなどはこの調査に多額の費用を充てている。また、リサーチ(通常日本ではリサーチというと研究開発の意味にとることが多い。リサーチは市場調査という意味で、研究開発はR&Dと言う)の専門家を必ずブランドやマーケティングの部署に張り付けている。実はこのようなリサーチこそがマーケティングにとっては金鉱である。データーを蓄積し分析をすることでマーケティングを強化できる。確かに、R&Dの力で他社と異なる品質の高い商品が開発できれば競争優位を得られるかもしれないが、しかし、一方的に品質だけを高めても過剰品質となり競争上不利になることも多々ある。消費者が何を求めているかを明確に把握しないでただ単に品質だけで勝負するとグローバル競争では負けることが多い。「品質の良い商品=よい商品」という図式は成立しない。「売れる商品=よい商品」と考えるべきである。この「売れる商品」とは「消費者に支持される商品」であることは言うまでもない。

 近年インターネットを活用した調査が主流になってきている。バイアスはあってもトレンドだけをしっかり追っていけば消費者がブランドをどのように捉えているかかなり正確に把握できる。リサーチなしにただ単によい商品を造り続ければそれでグローバル競争に勝てる時代ではなくなった。あくまで消費者に視点を置き、消費者の目から自社商品を競合品と比較することが重要なのである。繰り返しになるが、ブランドの棲家は消費者の頭の中なのである。

本誌:2013年12.2号 21ページ

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