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ブランドの起源

 ブランドとは何か。ブランド理論を確立したデイビッド・アーカーは「自社商品を他メーカーから識別するためのシンボル、マーク、パッケージ、デザイン、名前」と定義している。ブランドを創るために企業が行う活動を「ブランディング」という。INGがついていることに着目して欲しい。マーケティングという言葉にもINGがついている。両方とも日々継続してなされる活動であり、1回だけで終了するようなものではない。筆者はマーケティングを価値創造活動と定義しているが、マーケティングの中核の活動がブランディングであると考えている。

 ブランディングの元々の意味は「Burned(焼き印を押す)」から派生したもので、その起源は一般的に欧州の中世時代と考えられている。個人(商店)で製造された商品がある数量を超え、また、地域を超えて流通されるようになると、他社品と差異化し品質を保証するためにブランドが活用されるようになった。スコッチウィスキーや陶器などがその最初であると言われている。

 1980年代島根県で考古学上の大発見があった。神庭荒神谷遺跡から一挙に銅剣358本が出土したのである。その後、南東に3.4㎞しか離れていない加茂岩倉遺跡から39口の銅鐸が発見された。出雲王国が神話の世界の存在ではなく最先端の技術を有する文明を持っていたことが証明されたのである。面白いことにこの銅剣と銅鐸の一部に×印をつけたものがある。宗教的意味があると一般的に考えられているようであるが、筆者は所有者(恐らく地域の有力な武将の1人であろう)が他の人が所有する銅剣と銅鐸から区別するために印したものではないかと考えている。もしそうだとすればこれこそ日本のブランディングの始まりと考えられなくもない。

 「くだるもの」「くだらないもの」の語源も日本のブランドを考える上で重要である。「百済からきたもの」が「百済るもの」で「日本製」が「百済ないもの」という説もあるが、間違いのようである。江戸時代灘や伏見で造られた酒が下るか下らないかの原点のようである。灘や伏見で造られたお酒が大阪で集積され、樽廻船で江戸に運ばれたことから「下るもの」が誕生したようである。醤油も伏見や灘の酒と一緒に船で運ばれ、下り醤油として珍重された。お酒は上方の方が今日でも強いが、醤油は関東で生産が始まると段々と生産地は関東に取られてしまった。それどころか今日関東に本社のあるキッコーマン株式会社の経営努力により世界中で愛用されている。対して下るものである上方の酒は下るもののままで留まり、世界展開において醤油に遅れを取っている。日本酒もグローバル化して欲しいものである。その意味で京都市が提案した「乾杯は日本酒で」という条例は素晴らしい発想である。2020年のオリンピックは日本酒のグローバル化の絶好の機会である。

 前述したようにブランディングの意味には「焼き鏝」という意味がある。多くの牛が放牧されている牧場で牛の所有者を識別するために〇とか□という「焼き鏝」を牛の尻につけたマークである。つまり、「差のないものをどう差異化するか」ということが原点にある。差異化こそがマーケティングの中核活動であり、差異化のために商品開発をしたり、商品やサービスの改善をしたり、広告投資をしたりする必要がある。情報化が急激に加速する今日多くの商品やサービスは似通ってくるため消費者の目からみて差異化が認識できるようなブランディングが益々重要になってきている。「差別化」ということばもマーケティングやブランディングではよく使用されるが、これは間違った使用だと考えている。元々の英語はDifferentiationであり「差異化」が正しい訳である。「差別」は英語ではDiscriminationである。言うまでもなく教育に関わるものは使用してはいけない言葉の1つである。

本誌:2013年11.4号 19ページ

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