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食材偽装と食品公害事件

 ホテル阪急インターナショナルといえば大阪を代表する高級ホテルです。ところがこのホテルだけでなくグループ傘下のレストランで供されていた食材に多種多様の偽装食材が使われていたことが判明しました。

 解凍魚を鮮魚として供するのはまだ序の口、トビウオの卵をレッドキャビアと偽る、ふつうの白ネギ、青ネギを京都名産の九条ネギと詐称、既製品のハンバーグは手捏ねハンバーグに変身。商道徳云々以前にこの企業の品のなさ、危機管理能力のなさにあきれます。

 高級ホテルのレストランは家族や友人と気軽に食事をする場所というより結婚式の披露宴とか大切なお客の接待等に使われることが多いものです。今頃接待した人達は恥ずかしさのあまり顔を赤くして(いや青ざめて)いるのではないでしょうか。

 冷静に考えればトビウオの卵(とびこ)とマスの卵は大きさが違うので偽装に気づくかもしれませんが、今までクレームが出なかったのはそこが一流ホテルのレストランだから。つまりはブランドという包装紙が企業価値そのものなのに、その包装紙をいったん汚してしまったら100年の歴史もパアーです。伝説の名経営者、小林一三が作った「阪急」ブランドがこれほど傷ついた事件はほかになく、いったん傷ついた信用を回復するのには100年かかります。

 私が子どものころ森永ヒ素ミルク中毒事件(1955年)という大変悲惨な食品公害事件がありました。130人もの赤ちゃんが猛毒のヒ素が混入したミルクを飲んで死に、1万3000人の赤ちゃんがヒ素中毒になりました。粉ミルク製造工程で添加物として純度の低い安ものを使用し、その添加物の中にヒ素が混じっていたのです。

 もう半世紀も前のできごとですが、私は同世代の何万人もの赤ちゃんとその家族を今も苦しめている同社製品を買ったことがありません。森永ヒ素ミルク事件ほど深刻な被害はなかったのですが、プリマハム事件というのもありました(1967年)。

 ハムの原料にコレラワクチン製造に使った払い下げ豚肉を使用していたという恐ろしい事件。しかしこの事件をきっかけに、それまでほとんど無名メーカーだったプリマハムが全国区に。私は「焼け太り」という言葉をこの事件で初めて学びました。

 阪急は100年、200年かけてブランド力を取り戻して欲しいと思います。

本誌:2013年11.4号 15ページ

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