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[知的財産]   実用新案登録のための審査

ウエスト調整可能なズボンについて実用新案を最近とったと友人が自慢しています。そのズボンは出願5 年前ぐらいから売られているようなのですが、それでも登録されるのでしょうか。

無審査のため登録され得る

実用新案登録出願をすると、早期に登録し権利付与を行うため、技術的アイディアである出願内容が以前から知られていない新しいものか( 新規性) や公知技術をヒントに極めて容易に考え出せたものではないか( 進歩性) といった実体的審査( 出願内容の実体が、独占権たる実用新案権を与えてよい内容か否か) を行うことなく登録されます。

こうお話すると、『実用新案制度においては出願に関し「方式審査」や「基礎的要件審査」を行うと聴いたが・・・』と反論されることがあります。これら方式審査や基礎的要件審査というのは、出願書類が所定様式に従っているか、出願内容が「物品の形状、構造又は組合せ」( 先月号に詳しい) に係るものか、出願内容が公序良俗を害さないか、書類の記載が著しく不明確でないか等といった簡単な事項( 門前払い) を審査するのみで、特許と違い、上述のように実体審査は行われません。このように手間のかかる実体審査を行わないことから、方式審査や基礎的要件審査に問題がなければ、通常、出願から3 ヶ月程度で登録されます。

お友達のウエスト調整可能なズボンは、それと同様のものが出願前から販売されていたとのことですので、出願時に新しいものではなく( 新規性欠如)、本来は登録されるべきではありません。しかし、上の通り、実用新案制度においては実用新案権を与える価値があるか否かの実体審査を行うことなく登録を認めることから、このような本来は登録されるべきでないものも登録されてしまいます。即ち、現在の実用新案登録は、実体審査を受けずに登録されていますから、登録されるべき立派なものと登録されるべきでないものとの両方が混在しています( 登録によるいわゆるお墨付きの効果はありません)。これら両方のうち登録されるべきでないものについては、本来、権利が認められないものですから、このようなものに基づく権利行使による弊害( 例えば、お友達が登録したズボンと同様のズボンを洋服会社が販売できなくなる) を防止するため、実用新案権を行使する際の制限を課しています。

笠原特許商標事務所
弁理士・所長
笠原 英俊氏
岡山市北区野田2-7-12
TEL086-245-0440

本誌:2012年9.10号 22ページ

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