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中国鉄道体験記

 10月に続いて11月初旬再び中国を訪れた際、内陸の武漢(武昌駅)から長沙まで約300㎞の距離を鉄道で移動しました。

 長い行列の末やっとたどりついた切符売り場窓口で「長沙まで1枚」というと「指定席は売り切れです、立ち席ならあります」というので立ち席切符を購入しました(54元=700円)。座席は1列3-2の5人がけで通路が狭く立ち席といってもつかむところもありません。

 女性車掌が「奥に詰めろ」と客に命令する様はまさにプロの技。しかし庶民は強い。キップ切りのハサミを車両ボディーにカンカン叩きつけながら「入口に立ち止まらんと奥まで詰めんかい!」と怒鳴る女性車掌のど迫力にも乗客は知らん顔です。

 車内はもちろん、トイレ前、デッキ、連結部まで人がいっぱいで押し合いへし合い、そこへ弁当売り、飲料水売り、果物売り、土産物売りのカートが入れ替わり立ち替わりやってきます。そのたびに私はつま先立ちになり腹を引っ込めてカートをやりすごさなければなりませんでした。

 そんな混んだ車内でも乗客はみんなハッピー、高揚した旅行気分がこちらにも伝わってきます。網棚もかばんや運び屋の荷物でいっぱい。さすがに生きた鶏を持ち込んだ人はいませんでしたが、よく太った上海蟹が20匹ほど詰まったネットの周りには見物人が集まりカニの足をつついたりしながらの大にぎわいでした。

 老いも若きもよく食べ、よくしゃべり、よくケータイ(?)。弁当だけでは足りず次々とカップ麺を袋から取り出しては人ごみをかきわけデッキまでお湯をそそぎに行きます。

 おばちゃんが何やらごそごそかばんから取り出したものは昔懐かしい魚肉ソーセージ。なかなか取れない包装フィルムをガシッと歯で食い破りラーメンに投入。豪快です。瞬く間に車内はごみの山と化し、トイレラッシュが続きます。

 沿線は三国志の赤壁、洞庭湖、「岳陽楼に登る(杜甫)」の岳陽、屈原が身投げした泪羅(べきら)と中国屈指の名勝・旧跡が連続する区間ですが、外の風景よりも車内で繰り広げられる人間劇場に飽きることがない5時間でした。中国パワーの源はあの偉大な食欲から発していることは間違いありません。終着駅の恵州までまだ700㎞残し、夕闇迫る長沙駅で列車を降りました。

本誌:2011年11.21号 15ページ

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