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連載記事

無縁・有縁社会

 このところNHKは「無縁社会ニッポン」と題して連日のように特集を流しています。東京湾に浮かぶ身元不明死体、遺体はおろか遺骨の引き取りさえ拒否する子どもや親戚縁者、田舎で老いてゆく親を都会に呼び寄せてもうまくいかない例など、ありとあらゆる角度から無縁社会の実態を描き出しています。

 NHKのお節介はとどまるところを知らず、「現在独身のまま年を重ねているそこのあなた、これは人ごとじゃなくてあなた自身の明日の姿ですよ」といわんばかりの語り口は私には脅迫のように感じられます。当たっているだけになおいっそう。 

 ところが日本国内において無縁社会化が進行しているのとは反対に、カナダやブラジルに移民した日系人の子孫たちの間ではルーツ探しが大流行しています。

 私のところにも80年以上前にカナダに移住した伯父の孫たちから、「おじいさんの戸籍が見たい」などというメールが舞い込みます。広漠なカナダやブラジルで多様なバックグラウンドをもった人種の中で生きているといったい自分のアイデンティティとは?、自分のルーツは日本のどこ?という不安やもどかしさ、興味にとらわれても不思議ではありません。

 カナダの親戚からの依頼で不承不承、市役所に行き先祖様の戸籍を取りました。そこには最古の人物名として文化10年(1814)生まれの曾曾曾曾(ひいひいひいひい)ばあさんの名前が記されていて、なるほど戸籍というのは血筋が綿々と続いていることを証明しているものだと感心しました。それが私の代でピリオドが打たれるのは寂しくもあります。

 しかし今は21世紀。NHKや日系人が賞賛しあこがれる有縁社会にどっぷりつかり、戸籍や家系図の助けを借りて自己のアイデンティティを確認しながら生きていくなんて現代人にできるわけがありません。

 人はみな地球の子、どこで野垂れ死にしようがNHKになど哀れんでもらう必要はない、とまだもう少し時間がある私は強がりをいいつつ特番を見ています。

本誌:2010年2.15号 14ページ

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