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「介護は生きがい」か?

 岡山市在住のフリーライター、野田明宏さんが山陽新聞に「アルツハイマーの母を支えて」という記事を長年にわたって寄せています。

 中年息子が親を在宅で10年近く介護しているのは私も同じで、何もかもおかしいぐらいキャラがかぶります。野田さんは最近「お母さんの介護は生きがいなのか?」と人から問われることが増えてきたそうです。

 それに対して野田さんは職業柄多くの介護者に接した経験では介護を生きがいだと言う人は聞いたことがないと言い、その理由として「生きがい」という言葉には照れがあってみんな素直に口に出せないのでは?と分析しています。そしてご自身の介護生活については「母の介護が生きがい」と素直に言える日がきたらすてきだと結んでいます。 

 ここまで読んで私は果たしてそうなのかと思いました。親の介護は生きがいなのか?多くの人が「介護は生きがい」と言わないのは「照れ」のせいではなく正直そう思っていないからではないかという気がします。かと言って介護に忙殺される人々のだれもが自分の人生を無駄にしているとか犠牲になっているなどと思っているわけではないでしょう。

 「生きがい」という言葉は親の介護には当てはまらない。そもそも「介護」という言葉がよくありません。90歳にもなった親が日常生活で何から何まで家族の手を煩わすのは当たり前、家族の生活風景そのものです。ちょうど若いお母さんが赤ちゃんに乳を飲ませオムツを換えるのを「介護」とは言わないように。「介護」とか「生きがい」などという言葉に振り回されたら生きていくのがつらくなります。

 もっとも野田さんは介護者であると同時にアルツハイマー病に苦しむお母さんの晩年を密着取材し記録するプロのライターでもあり、そこに介護者・記録者としての生きがいがあるのは当然のことだと思います。

本誌:2009年6.15号 12ページ

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