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過剰投薬

 NHKのテレビ番組でうつ病の特集をやっていました。見ていて暗い気分にさせられたのが医師による薬の過剰投与です。

 患者が症状を訴えるたびに「じゃあ、お薬ひとつ追加しておきましょう」と、また増え、1日十数種類もの薬を処方されてかえって症状を悪化させているケースが何件か紹介されていました。

 私の父(腎不全)も毎日11種類、23個の薬が処方されています。ところが最近、透析中に血圧が低下し意識が遠のく事件がありました。

 そこで改めて父の薬をチェックしてみると、何と血圧を下げる薬が毎日4種類!私はいくら何でも失神するぐらい血圧が下がる日が続いているのにおかしいと思い、主治医に電話したらいとも簡単に「降圧剤の服用は全部やめてください」とのことでした。

 何か変です。命にかかわることなのに患者側が言い出さない限り漫然と薬を出し続ける病院。そのまま降圧剤を呑み続けて心臓が止まったとしても、91歳の父は「寿命です」ということで片付けられるのが落ちです。

 現在父の薬は胃薬などおまじないようなものだけ。「薬をきちんと呑まさなければ」という呪縛から解き放たれた私はもう以前のように「薬、薬」とやいやい言わなくなりました。すると万事天の邪鬼(あまのじゃく)の父は出された薬をちゃんと呑むようになりました。

 思えば私が薬を見直すまで、薬を呑むことにあんなにも抵抗していたのは、父の体が不適切な処方を敏感に察知していたからに違いありません。

 人間も90歳を過ぎてなお矍鑠(かくしゃく)とした人はさすがです。医師や薬剤師、“善意”の家族の言いなりになることがいかに危険なことか、ちゃんと見抜いています。これは智慧というより動物的な勘でしょう。

本誌:2009年3.9号 12ページ

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