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銭ゲバ

 ジョージ秋山原作の「銭ゲバ」(1970-71)がテレビドラマ化され、初回分が先日の土曜日にオンエアされました。

 キャッチコピーは風采の上がらない主人公が口にする「金のためには何でもするズラ」。

 週刊少年サンデーに連載された原作漫画を知らない若い世代の人々にとって「銭ゲバ」なんておそらく初耳でしょう。

 「ゲバ」とは1968年ごろ学園闘争において流行した言葉でドイツ語のゲバルト(暴力、実力行使)の略語、学生が振り回していた角材を「ゲバ棒」などと称したものです。

 しかし「銭ゲバ」の「ゲバ」は暴力という本来の意味は希薄で、何となく「極端なもの」を表す接尾辞のようなものでした。「銭ゲバ」とは“金の亡者”というほどの意味だったと思います。

 そんな40年も前の暗い漫画がなぜ今またテレビドラマ化されるかというと、“派遣切り”にあった労働者が財布の中にわずか数十円を残して餓死する現代の時代風潮が当時の情況に酷似していて、視聴率が取れるという目算があってのことでしょう。

 さて、極貧の家庭環境に育った主人公、風太郎は貧困故に人を殺し、警察の追求を逃れ、あらゆるきたない手段を使って成り上がります。罪に罪を重ねながら。

 40年前の不確かな記憶をたどれば、金と罪でがんじがらめになった主人公も最後はあどけない少女の存在によって罪に目覚め、魂が救済される、というまるでドストエフスキーの大河小説のような結末を迎えたと思います。

 考えてみれば、この40年間に日本で起きたことといえば、狂乱物価、バブル経済とその崩壊、ライブドアショック、サブプライムローンに端を発する“世界恐慌”と経済の激しい浮き沈みばかり。政治的な変革は皆無でした。

 学生時代、日本の政治状況に異議を唱えてゲバ棒を振り回していた同世代の人間は社会人になるやいなや等しく「銭ゲバ」に変身し、日本を見事なまでの拝金国家に変えました。団塊世代が犯した罪はまことに大きいと思います。

本誌:2009年2.2号 14ページ

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