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還暦

 年が改まり平成の世も、はや20年。私にとっては還暦の年でもあります。いつまでも若いと自分に言い聞かせてみても、20世紀前半生まれの人間はもう十分骨董品です。

 ふと気がつくと、どんな会合に出ても、そこにいる人々の中で自分は高齢者グループに分類されてしまいます。かろうじてまだ若い部類に入れてもらえそうなのは、お年寄りに人気がある岡山市立せのお病院の待合室にいる時ぐらい。

 そんな還暦の自分に何ができるのか、何をしたいのか、何をすれば満足感が得られるのか、考えてみれば人助けとか世のためなどと殊勝なことはできそうにもありません。

 では、快楽追求は?そう!、これこそ体力に限界があると言いつつもまだまだ、そこそこできそうな気がします。何といっても人は楽しみなくして生きることはできず、生きていくエネルギーの100%は快楽追求がもたらすものです。

 90歳を過ぎ、腰痛で椅子から立つのもやっとの父でも、私がこっそり2階の軒先に吊している干し柿を取るためなら、杖の助けも借りずにトントンと階段を登れます。

 息子の私も、食欲が老いの坂の希望の灯になってくれることを信じています。中華料理の奥深い世界などほとんど知らないし、フレンチでもしみじみ美味な料理には今まで数えるくらいしか出会ったことがありません。還暦をもって美食元年にしようと思います。

 そしていつの日か訪れる最期の日の楽しみは、昨秋来杳として行方が分からない愛猫ムサシに再会すること。あの世で最初に迎えにきてくれるのはいっしょに暮らしたペットだといいますから。

本誌:2008年1.1号 52ページ

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