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父の芸風

 満90歳の父。週3回、月・水・金と人工透析に通いながらもなお生への執着は人一倍強く、老いの身支度などまっぴら、深夜までテレビの洋画劇場にかじりついています。

 ところが最近、透析がない日も朝早くから病院に行く用意をしていたりして、ついつい私の口からイヤミが出ます。

 「お父さん、今日は何曜日?」「火曜日」「火曜日に透析あるの?」「分からん」などというトゲトゲしい会話。やはり一度専門家に診察をしてもらわないといけないと思い、父を大学病院の神経内科に連れて行きました。

 ところが、医師が出す課題について、時計を描いたり立体図形を模写することなど朝飯前、100から7を次々と引き算していく課題もそばにいる私より早くこなして、医師も「90歳の人がこれだけ正確に時計の絵を描けるのは珍しい!」などとあきれる出来映えでした。

 ところが、最後の質問「今年は平成何年ですか?」の問い掛けには「平成12年」と答えた後で「19年だったかな?」…。

 正直なところ、これは医師をからかっての狂言か、それとも本当に日時に対する見当識の混乱が生じているのか判断しかねます。

 実は平成12年ごろにも認知症を疑って同じテストを受けさせたことがあり、本人は相当屈辱に感じたらしく、今でもそのことを根にもっているふしがあります。

 やはり親父は医師や息子をからかってボケ老人を演じているのか?父の芸風は孫のような医師にも還暦近い息子にも歯がたちません。

本誌:2007年10.29号 12ページ

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