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ひめゆりの塔

 2007年、戦後生まれの人も既に還暦を迎えつつあります。しかし、平和ぼけと言われる昨今、未だに彷徨える魂があることをともすれば人は忘れてしまいます。

 年末に沖縄の“ひめゆりの塔”を訪れました。資料館には戦禍の犠牲となった若く聡明な二百数十人の女学生と教師の写真が1人ひとりパネル展示されていて、名前の下にはその人となりを紹介する簡単なメッセージが添えられていました。

 「努力家で下級生からも慕われていました」…。余談ですが、私の母も岡山女子師範学校でひめゆりの乙女たちと同じような青春時代を送ったようです。パネルの中で各々輝いて見える女学生のまなざしに、私が知らない若き日の母のイメージがダブって胸が熱くなってきました。

 1975年に起きた“ひめゆりの塔事件”―。過激派の青年2人が洞窟の中に17日間も潜んで待ち伏せし当時の皇太子夫妻に火炎瓶を投げつけた事件です。

 極めてイデオロギー的な事件でありながら、犯人の1人、沖縄生まれの青年が事件の動機を「乙女たちの霊魂に依頼されてやった」と語ったことはあまり知られていません。

 先祖や家族を何よりも大切にする沖縄にあって、恋も知らず命を突然絶たれた彼女たちの無念さが生き霊となって青年に取り憑いたという証言にうそはない…そんな気配が洞窟に漂っていました。

 2007年が平和な年でありますように。

本誌:2007年新年号 50ページ

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