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傷の消毒

 私は今でも擦り傷や切り傷をした時はオキシドールで消毒し、その上に赤チンを塗りガーゼ付き絆創膏を貼っています。それを怠ると何となく傷が膿むような気がするのです。

 ところが夏井睦さんという外傷治療の専門家が書いた本によれば従来の「消毒とガーゼ」にたよる創傷治療は大変な間違いだそうです。(創傷治療の常識非常識、夏井睦、三輪書店、2004)

 驚いたのは消毒薬は傷を治すというよりむしろ組織障害性があるということ。傷口は水道水でやさしく洗ってゴミや砂などを流し、傷の上を食品用のラップで覆い絆創膏でとめる方がはるかに早くきれいに治るそうです。

 ポイントは傷口を湿潤に保つこと。確かに口の中を切ったり食べ物でやけどしたとき、何もしなくても翌日にはきれいに治ります。生命は海から出現したこと、今でも体の内部組織は海中の環境にあることなど考えたら、創面を乾かしてはいけないという感覚はよく理解できます。

 卑近な例をもう一つ引用すると、注射するとき皮膚をアルコール消毒することは何の意味もないそうです。著者はさらに専門家向けに手術時の消毒の問題、大きな傷の処置、皮膚移植の妥当性などについて最新の考え方や被覆材料を紹介しています。

 論文発表、講演会、ホームページなどを通じて、夏井先生の考え方は急速に全国の病院や医師にも浸透してきているようですが、新しい常識が患者にも受け入れられるためには今少し時間がかかりそうです。

 現状では、病院で採血するとき、皮膚を消毒もしないでいきなり針を刺されたら患者の驚きと怒りは相当なものになるはずです。

本誌:2005年2.11号 14ページ

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